2013 Fiscal Year Research-status Report
慶長・元和期における豊臣「公儀」の変質過程の研究―秀頼発給文書の分析―
Project/Area Number |
25370813
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
福田 千鶴 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (10260001)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 豊臣秀頼 / 公儀 / 慶長・元和期 / 黒印状 |
Research Abstract |
本研究は、慶長・元和期の政治史研究を進めるために、豊臣秀頼発給文書を悉皆的に集め、古文書学・史料学的見地から分析し、当該期の政治過程における重要なキイワードである「公儀」の変質過程を解明することを課題として設定した。 そこで、平成25年度の調査先としては、防府毛利報公会毛利博物館、吉川史料館、米沢市上杉博物館、京都大学総合博物館、国文学研究資料館、東京大学史料編纂所において豊臣秀頼発給文書を調査し、デジタルカメラによる撮影を行った。 最優先ですすめた毛利博物館の調査では、目録上で豊臣秀頼の朱印文書となっていた原文書の確認をしたが、残念ながら黒印文書であったことが明らかとなった。それらの研究成果については、「豊臣秀頼発給文書の研究」(1)(『九州産業大学国際文化学部研究紀要』55号、2014年9月、論文1)、「豊臣秀頼発給文書の研究」(2)(『九州産業大学国際文化学部研究紀要』56号、2014年12月、論文2)において公表し、阿波徳島蜂須賀家文書、豊後竹田中川家文書、対馬宗家文書、長門萩毛利家文書、周防岩国吉川家文書の分析をおこなった。そのうち、対馬宗家文書、豊後竹田中川家文書に関しては、所蔵機関で公開されているデジタルアーカイブズを利用させていただいた。また、次年度の研究成果として出版を予定していた『豊臣秀頼―豊臣「公儀」の行方―』の原稿作成も終えることができている。 この他、論文1では豊臣秀頼発給文書は168通としていたが、その後の調査で近江水口加藤家文書に豊臣秀頼発給黒印状の原文書8通が伝来していることが明らかとなった。次年度にかけても、新たな発給文書の情報収集に努める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に調査予定としていた防府毛利報公会・岩国徴古館、東京大学史料編纂所の調査を終え、平成26年度に調査予定としていた京都大学・大阪城天守閣・米沢市博物館・国文学研究資料館での調査も前倒しで実施することができ、豊臣秀頼発給文書のデジタルカメラによる収集をおえることができた。これらのデータをもとに、紀要論文2本を作成して公表し、『豊臣秀頼』(歴史文化ライブラリー)の原稿化も終了している。以上から、おおむね当初の計画に通りに順調に研究は進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、残る豊臣秀頼発給文書の悉皆的収集にさらに努める。調査対象先は、平成26年度は盛岡公民館、天理大学(伊達家文書)、徳川美術館、真田宝物館を予定している。また、可能であれば、新たに発見された水口加藤家文書に伝来する秀頼発給文書の原文書調査をすすめたい。 なお、平成26年4月より研究代表者の所属先が変更となったため、研究環境が大幅に変化した。とくに、これまでは所属大学の紀要に研究成果を公表してきたが(年3回刊行)、これが利用できなくなったことから、研究成果を公表する媒体の確保が急務となっている。対応策としては、インターネットHP上でのPDFによる研究成果の公開など、新たな公開手段を検討している。 これとは別に研究成果の社会還元として、当初に予定していた『豊臣秀頼』の出版は、本年度9月に刊行の予定である。これも計画通りにすすめることにしたい。
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