2015 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代出土文字資料の動態的歴史分析―〈荷札の終焉〉にみえる木簡の機能
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25370820
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (00359449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 木簡 / 墨書土器 / 集成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、平安時代木簡の性格と機能を律令制の変質過程のなかで合理的に説明することを課題としている。最終年度にあたる2015年度には、奈良県橿原市・桜井市・天理市、兵庫県神戸市・豊岡市、愛知県豊橋市、静岡県磐田市、 群馬県前橋市、秋田県大館市、鳥取県鳥取市、熊本県八代市等から出土した木簡・墨書土器等の熟覧調査および撮影を行い、資料収集した。 平安時代木簡の調査成果として、鳥取県岩吉遺跡・青谷横木遺跡・大御堂廃寺の最新の釈読成果を公表したほか、荘園木簡などによる平城遷都後の藤原宮周辺にかかわる論考、重要文化財嘉禄本・暦仁本古語拾遺の書誌にかかわる論考などを著した。また、これまでに正式報告された藤原宮京出土木簡1,324点全点の樹種を調査し、そのうち科学的な成果が未公表のままであった1,064点につき樹種を整理した結果、ヒノキ系が9割を超え圧倒的に多いことを確認した。 3年間の探訪調査と過去の記帳ほか調査記録の精査を踏まえ、約2800点に及ぶ全国出土平安時代木簡を集成した『平安時代木簡集成(稿)資料編』を編み、全国の出土状況を網羅し、そこで示した内容分類により、令前木簡や奈良時代木簡との比較から導かれる平安時代木簡の特徴を明らかにすることができた。 文書木簡の大型化と内容の充実、題籤(軸)など文書の保管にかかわる木簡の増加、呪符木簡の全国的展開、呪符や仏教関係史料(卒塔婆、笹塔婆、こけら経など)の出現など文書木簡が内容的に充実していく反面、荷札木簡の退顚は八世紀末にすでにはじまっていることが明らかになった。また墨書曲物のある井戸枠が畿内にのみみられる点、仮名を記した木簡が畿内から東国に顕著である点など、地域的特質ともいえる現象を見出し、木簡の分類的把握に一定の見通しをえたほか、当該期の文字文化の時代的特質を概観する手掛かりをえることができた。
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Research Products
(16 results)