2013 Fiscal Year Research-status Report
イランにおける「近代性」の意味変容と「国民」の創生
Project/Area Number |
25370821
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒田 卓 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70195593)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東洋史 / イラン近代史 / 比較交流史 / 多国籍 |
Research Abstract |
本研究では、イランにおける「近代性」との邂逅が19世紀に入っていかに咀嚼・解釈され、そして国内外からの支配に対抗する拠り所へと変容していったかを、国境の外、つまりインド北東部、オスマン帝国帝都イスタンブル、ロシア領ザカフカースで活躍しイランの「近代性」生成に寄与したものの、その生涯や作品が存外に知られていない人物3人に照明を当てることを通して解明することを主な目的としている。 本年度は時代的には18世紀後半から19世紀20年代ぐらいまで、地域的にはインド北東部のイギリス東インド会社が植民地支配下に置いたベンガルなどと、間接的な支配が及びつつあったアワド地方を、そして人物としてはイラン出自のムスリム文人官僚ミールザー・アブー・ターレブ・ハーンに焦点を絞ることにした。 上記の目的と計画に沿って、アブー・ターレブ・ハーンのヨーロッパ旅行記『求道者の旅路』(略称Masir-e Talebi)の丹念な読解・分析と本旅行記の特性の抽出を試みた。それをまとめる前段階として、平成26年2月に研究発表を招請され、「インド在住イラン系ムスリム官僚ミールザー・アブー・ターレブ・ハーン(1753~1806)の訪欧旅行記をめぐって」と題する招待講演を行った。本講演では同旅行記が成立した事情や歴史背景、執筆意図をはじめ、全体の記述を①新奇な発明物、②慣習・文化の比較、③政治社会制度、④オスマン帝国の政治・文化論の4つの分野に分類し分析を行った。 また、本年度よりむしろ最終年度のテーマに関連するが、ロシア領ザカフカースとの思想交流も一因となって20世紀に展開されたジャンギャリー運動の研究に関して、フランス・プロヴァンス大学のブロンベルジェ教授による講演への詳細なコメントと議論を英語で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究科題の計画を立案した時点では予期していなかった所属研究科の研究科長職に就くという事態の変化が生じた。職責上の理由から本課題へのエフォート率を低下させざるを得ず、また当初予定していた資料収集や研究交流のための海外出張も断念することを余儀なくされた。また、研究論文や図書の執筆のための時間を確保することができず、口頭発表や招待講演の準備を行うことで手一杯の状態となった。それゆえ、予定していた研究計画からは多少遅滞が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
任期の関係で今年度も引き続き研究科長職を務めざるを得ず、そのため研究計画策定時に想定していたエフォート率を満たすことは、現在の職務事情を勘案すると相当困難と言わざるを得ない。ただし、平成25年度に比すると、エフォート率は若干好転すると思われ、とくに夏季や冬季の休暇期間を活用して、研究課題に取り組み、昨年度から積み残した資料読解・論文作成・海外調査などの作業を遂行するとともに、平成26年度計画にも着手し、いくばくかの挽回と進捗を図ることにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題を立案した時点では予期していなかった所属研究科の研究科長に就くという事態の変化が生じた。そのため、当該年度に予定していた資料調査・収集や研究者との交流のための海外出張を行うことが不可能になったので、多少の次年度使用額が生じた。 平成26年度も引き続き研究科長職を務めざるを得ないが、平成25年度に比べるとエフォート率は好転する予定である。それゆえ、当該年度に見送った海外調査を実施し、それに主として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)