2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370823
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中村 篤志 山形大学, 人文学部, 准教授 (60372330)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モンゴル / 清朝 / 王公 / 日記 / 宮廷儀礼 |
Research Abstract |
本研究は、清朝藩部統治の重要な政治アクターであるモンゴル王公および駐箚大臣等の清朝派遣官僚に注目し、特に、彼ら王公・官僚らが記したモンゴル語・満洲語・漢語の日記史料を中心に分析する。従来の研究が、主に行政文書を用い、清朝支配の貫徹か在地社会の自律性かという二元論的な課題設定をしていたのに対し、本研究では、統治者と被統治者が恒常的に接触する「場」(宮廷・駐箚地)において、実際にモンゴル王公が皇帝・清朝官僚をいかに認識し、いかなる関係を構築していたのかに注目し、清朝統治のメカニズムとそのモンゴル史上の意義を検討する。 本年度は、研究初年度であるため、国内・海外での基本史料の調査・収集を通じて、史料状況の全体像把握につとめると同時に、既収集史料の分析を進め、研究全体を展望する論文を執筆するなど、国内外での成果発信につとめる計画であった。 実際に、2013年8月に台湾で調査を行ったほか、国内では東京、仙台、大阪、札幌などの関係機関で調査を行った。対象は、出使あるいは駐箚した漢人・満人官僚の日記史料で、主に漢文で書かれた日記を中心に収集・整理を開始した。 また本研究の核となるモンゴル語の日記史料や宮廷儀礼に関わる史料の収集・整理にも着手した。これらの成果として論文2編、学会発表1件がある。特に論文では、漠北モンゴルの閑散王公が、光緒9(1883)年末に北京・乾清門に行走した際のモンゴル語日記を分析し、作者バボードルジの出身・経歴、記述内容の特徴など史料の性格を明らかにし、序結において、先行研究の課題と今後の展望をまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の特徴のひとつは、モンゴル語や漢語、満洲語などの多言語で書かれた史料、特に行政文書とは異なる日記史料を扱うことにある。マルチ・アーカイヴァルな研究手法を取るため、広汎な史料調査が不可欠である。初年度では、特に既収集史料の整理・分析を進めるとともに、国内・海外での基本史料の収集および関連史料の予備的調査を行い、史料状況の全体像把握につとめる計画であった。 当初の計画通り、モンゴル王公の光緒9(1883)年末の日記の基礎的分析に着手し、本研究全体を展望する論文を公表することができた。また国内外の所蔵機関にアクセスし、漢文で書かれた日記史料や宮廷儀礼に関する史料を収集したほか、関連する刊行書籍を購入した。また史料の収集・整理に必要な機材を購入し、次年度以降の円滑な調査・研究が進められる環境が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は中間年度に当たるため、本年度に収集した史料の整理・公開を進め、国内学会や国際シンポジウムで成果を発表することで、議論の共有化に取り組む。史料分析の主たる対象は、本年度に成果公開したモンゴル王公バボードルジの光緒9(1883)年乾清門行走日記であるが、『翁同ワ日記』など漢文で書かれた同時代の日記史料、宮中の皇帝の活動に関する公文書などを相互参照することで、より体系的な研究に発展させる。 またモンゴルに派遣された大臣の漢文日記史料も本年度に調査し一部を収集した。それらの分析にも着手し、年度末までには基礎的分析を終えたい。 史料調査は、継続して東京東洋文庫や台湾の各研究機関を中心におこなうが、当初改修中とされていたモンゴルの国立中央公文書館が閲覧可能な場合は、モンゴルでの史料調査も検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初2014年3月にモンゴル国での史料調査を予定していたが、本年度の史料収集が順調に進んだため、既収集史料の整理・分析作業を集中的に行った。次年度は学会での成果発表を行う機会も多いため、一部を次年度の旅費として繰り越した。 次年度の当初計画は以下のとおりである。物品費(45万を予定)は理藩院題本など大型の書籍の購入が見込まれるほか、海外での貴重書籍購入や文献複写代として計上した。旅費(約37万を予定)は、台湾・モンゴルでの調査、および国内学会・研究会での発表に当てる予定である。人件費・謝金(5万を予定)は、史料の収集や翻訳に関わるものとして計上した。その他(5万を予定)は、膨大な収集史料を整理するための学生・院生の雇用代として計上した。
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