2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370830
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉本 道雅 京都大学, 文学研究科, 教授 (70201069)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 左伝 / 国語 / 郭店楚簡 / 上博楚簡 / 淸華簡 / 北大簡 |
Research Abstract |
第一に、『郭店楚簡』・『上海博物館蔵戦国楚竹書』1~9・『清華大学蔵戦国竹簡』1~2を対象に、通仮字・古今字・異体字ないし訛字を外して本字・今字・正字のみを用いた「本字テキスト」を作成し、それに加えて、通仮字を見出しとした通仮字・本字置換表を作成した。さらに『上海博物館蔵戦国楚竹書』のうち、『国語』に類似した諸篇については、語彙の包括的分析を行った。 第二に、『国語』の包括的分析を行い、その研究成果の一部を「国語成書考」として公刊した。結論として以下の所見を得た。『国語』は当初は晋語とそれを補充する周魯楚語の章群として編纂された。この段階では晋語と並立しうる周魯楚語が想定されていなかった可能性が大きい。ところが、編纂の過程で、周魯楚語を拡充して、少なくとも形式的に晋語に並立しうる各国史が志向されるようになり、前3世紀半ばに晋地において周魯晋楚語から成る原『国語』が成立した。斉語・呉語・越語上下はそれぞれ単行の作品である。周魯晋楚語から成る原『国語』が、春秋時代を晋楚争霸を基軸に理解していたのに対し、斉呉越語を加えた現行『国語』は、斉晋楚語越の五霸を提示し、斉桓公の覇権を無視する原『国語』とは決定的に異なる。前漢文帝期に降って、原『国語』の編者とは別の編者が原『国語』に斉吳越語を附加して現行『国語』が成立したことが推定される。 第三に、中国の研究者と『周訓』をはじめとする北大漢簡の共同研究に着手し、韓国・米国の研究者と清華簡『繋年』に関する共同研究に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年4月の研究実施計画では、(一)戦国楚簡の「本字テキスト」作成、(二)『国語』の包括的分析、(三)中国の関連研究機関における最新の研究情報・研究資料の収集を予定していた。 (一)については「本字テキスト」作成に加えて、(二)との関連で、上博簡のうち、『国語』と形式の類似した『昭王毀室』『柬大王泊旱』『曹沫之陣』『姑成家父』『競建内之』『鮑叔牙与隰朋之諫』『競公瘧』『平王問鄭寿』『平王与王子木』『荘王既成』『申公臣霊王』『鄭子家喪』『吳命』『命』『王居』『志書乃言』『成王為城濮之行』『霊王遂申』『陳公治兵』につき、語彙の分析を行った。上博簡は2257±65BPすなわち、前307年の前後65年と報告されているが、語彙については、Karlgrenの「前3世紀の標準文語」に属し、これらの文献がおおむね前4世紀末に成書し、ほどなく下葬されたこと、また「前3世紀の標準文語」が少なくともその一部は前4世紀まで遡りうることを確認した。 (二)については、野間文史『春秋左氏伝 その構成と基軸』(2010)の方法に示唆を受けて、『国語』各章の字数に基づく定量的分析を進め、予想外の成果を獲得した。その成果の一部を、上述の如く「国語成書考」として公刊した。 (三)については、諸般の事情により、本年度は中国への渡航は見合わせざるを得なかったが、インターネットを活用することで、研究情報・研究資料は支障なく授受されており、さらに当初予定していた中国以外に、韓国・米国の研究者との共同研究にも着手しえた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年4月の研究実施計画では、平成26年度には、『国語』に引き続き(1)『竹書紀年』『公羊』『穀梁』など『春秋経』および『左伝』に類似した編年体史書、(2)『呂氏春秋』『韓非子』『新書』『韓詩外伝』の春秋史関係の記述、さらに(3)馬王堆漢墓帛書『春秋事語』・阜陽漢簡『春秋事語』・北大漢簡『周訓』など戦国後期から前漢前期の成書が推定される『国語』に類似した出土文献の分析を進めることを予定していたが、平成25年度の研究成果に鑑み、これに加えて、『春秋経』『左伝』の定量的分析を進め、これらの史書としての性格をあらためて検討したい。さらに、『上博』『清華』続巻の刊行が見込まれるので、これらの本字テキストを作成し、中国および韓国・米国の研究者との共同研究も継続する。 平成27年度には、前年度の作業を継続するとともに、報告書の作成につとめる。報告書は序論において先行研究を批判に総括し、ついで各論においてまずは『春秋経』『左伝』の文献的性格を確認し、ついで『国語』以下、各文献と『左伝』との比較分析に基づき、それらの文献的性格と成書年代を論ずる。結論においては、おおむね戦国中期から前漢前期における『左伝』の成書とその受容、春秋史認識の推移を総括するものとする。
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Research Products
(3 results)