2015 Fiscal Year Research-status Report
近現代南アジアにおける軽工業製品雑貨:広域流通、政治・文化表象、慈善
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25370835
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大石 高志 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (70347516)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 軽工業製品 / 雑貨 / 商人ネットワーク / 環インド洋世界 / インド人商人 / 燐寸(マッチ) / 硝子製品(腕輪、数珠) / タバコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで、近代インドに消費財として活発な流通を見た幾つかの特定の商品、具体的には、硝子小瓶、硝子腕輪、ビーディー(在来タバコ)、燐寸(マッチ)、香水・香油を取り上げて、その製造や流通の特質のみならず、消費段階で生じた政治・文化的な表象、さらに、事業家によって付随的に展開された慈善、教育、福祉、宗教などの社会的な活動を、それらの総合的もしくは接合的な歴史的動態のなかで、明らかにする試みを行ってきた。今年度は、2015年5月、2016年1月、2月、3月と計4度のインド出張・調査を集中的に行い、インド中央部や西部、さらにコルカタで、ビーディー関係や硝子製品関係の巡検や面談を含む調査を行った。また、加えて、デリーでの文書館史料調査を進めることが出来た。 研究成果の発表・発信と学術交流に関しても、順調に押し進めることができた。例えば、世界経済史学会(WEHC)の2015京都大会で、海外の研究者と協働しながら、近代インドにおける商品の多様性を製造・労働や消費、アイデンティティの動態から読み取ろうとするセッションを企画・実施し、自身も、硝子製品(さらにその装填品の香水)に関する論稿を発表することができた。このほか、日本南アジア学会の全国大会で、ビーディーの歴史的動態に関する研究成果を、グジャラート出身の商人の広域ネットワークの形成や広告媒体を通じた独自の商品文化の醸成に着目するかたちで、発表した。また、日本学術振興会とインド歴史学協会(ICHR)の共同事業である日印の歴史学研究交流促進事業の基点となるニューデリーでのシンポジウムに2016年1月に報告者として参加させていただき、燐寸(マッチ)の貿易を通じた戦前の日印間の経済関係の断面を分析する論稿を発表する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年末段階で、硝子小瓶、ビーディー、燐寸(マッチ)の関係では研究の進展が当初の見込み通りであるが硝子装身具(腕輪など)と香水・香油関係では、更なる調査を行う必要性があらたに生じたこともあり、本研究の期間を2016年度にまで1年間延長する申請を行い、現在ではそれが認められている。2016年に入って、3度のインドへの出張・調査を行ったことなどにより、そうした更なる調査の必要性に、相当程度は、対応できたかたちになっている。2016年度も、このまま、研究調査や研究発表、学術交流を、鋭意、行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年末段階であらたに更なる調査の必要性を認識するに至っていた硝子装身具(腕輪など)と香水・香油については、2016年に入ってすでに相当の進捗が見られたが、期間延長として与えていただいた2016年度を利用して、本研究で対象としている軽工業製品について、これらを含めて総合的に、積極的な研究調査を進めていきたい。また、研究発表や海外の研究者との学術交流についても、2015年度までと同様、鋭意、行っていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究で焦点を当てている特定の軽工業製品のうち、硝子装身具(腕輪など)や香水・香油について、あらたに更なる調査研究の必要性を、2015年後半の段階で認識していたこともあり、その時点で、研究の補助事業期間の1年間の延長を申請し、その後、平成28年3月22日付にて、認められている。「次年度使用額」は、こうした事情によるものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年1月から3月までの期間に、硝子装身具(腕輪など)や香水・香油についての一定の研究の進捗もあったが、そうした商品分野の調査・研究も含めて、2016年度は、さらに、研究の総合的進展と成果発表、海外の研究者との学術交流を執り行いたい。具体的には、書籍購入などに伴う物品費や自身の研究出張に要する旅費のほか、日本や海外の研究者の招聘に一部を使用させていただく予定や可能性がある。
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