2014 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半の中国における地方軍事勢力と社会変容――郷勇と諸反乱
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25370837
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
菊池 秀明 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20257588)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 曾国藩 / 湘軍 / 太平天国 / 地域武装 / 政治的上昇 / 満漢対立 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は1855年から1856年までの湘軍の活動について論文にまとめた。その一つは「湖南岳州、湖北武昌と田家鎮をめぐる攻防戦」で、湘潭における勝利後、曾国藩は湘軍組織の再編を行い、湘軍の戦闘力は飛躍的に高まった。これに対して西征軍は食糧調達を目的とした部隊であり、指揮官の無能さも手伝って敗北を重ねた。また湘軍将校が見せたマネジメント能力の高さは、後々中国の近代化事業を進める原動力となったことを指摘した。次に「湖口の戦いと太平軍、湘軍の湖北、江西経営」では、江西九江へ進出した湘軍が大敗を喫し、太平軍が湖北へ再進出する過程を分析した。だが太平軍は住民に対する強圧的な統治を行って支持を失ったこと、江西で後方支援に力めた曾国藩も清朝の地方官と対立し、地域経営を進められなかった事実を分析した。さらに「湖北南部の戦い、石達開の江西経営と西征の終焉」では、湘軍と太平軍の武漢をめぐる攻防戦、石達開の江西経営について分析した。安徽で経験を積んだ石達開の地域経営は合理的で、曾国藩は南昌に包囲されて追い詰められた。だが石達開は南京へ呼び戻され、天京事変が発生したために太平軍は勝利を収められなかったことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
11月に上海で太平天国史学会主催の「太平天国失敗150周年学術討論会」に参加し、15日午前に基調報告「太平天国軍中的私人結党与地方武装集団」を行った。また討論終了後、16日には上海市高橋鎮にある太平天国の古戦場を訪問し、埋葬されている太平天国将兵の墓を見学した。17日午前には南京大学名誉教授の茅家琦先生を訪問し、欧文史料を用いた太平天国史研究の可能性と課題について意見交換を行った。さらに同日午後には南京大学歴史系の孫江教授および大学院生とミニ・シンポジウムを開催し、講演「湘軍の湖北、江西経営とその支持者、反対者・太平天国時期の地方武装集団が中国近代史に与えた影響について」を行った。太平天国史研究の学術討論会があり、中国側の学者と交流して多くの成果を得ることが出来た。また南京を訪問して学術交流と報告を行った。そのほかには論文の執筆に重点を置き、また史料の整理を積極的に進めた。その結果予定の時期までの史料整理は大幅に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
1856年の天京事変後長江中流域における湘軍と太平天国の戦いについて、『清政府鎮圧太平天国档案史料』『曾国藩全集』および台北・国立故宮博物院で収集した新史料を元に分析を進める。とくに湖北で胡林翼が進めた税制改革に注目し、どのように後方支援の戦費を捻出しつつ納税者の負担軽減に力めたかを分析する。また1860年代の淮軍の登場と南京攻撃における湘軍の役割について考察する。淮軍は湘軍に比べ、その組織に関する研究が少ないが、淮軍出身者は洋務運動において重要な役割を果たしており、人的なネットワークを確認することが重要である。本研究は李鴻章が安徽の団練を組織した1850年代前半から淮軍創設までの経緯に再検討を加える。さらに淮軍と浙江へ派遣された左宗棠の湘軍は、外国人が組織した部隊(ゴードンの常勝軍、ジッケルの常捷軍)と密接な関係を持っていた。本研究ではこの外国勢力との関係が軍に与えた影響を考察すると共に、左宗棠軍の特質について南京を攻撃した曾国センら湘軍主力と比較しながら検討を進めたい。
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Causes of Carryover |
誤差の範囲ではあるが、消耗品を購入する時期を年度開始後にしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算額とあわせて、消耗品費で使用済み。
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