2017 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半の中国における地方軍事勢力と社会変容――郷勇と諸反乱
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25370837
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
菊池 秀明 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20257588)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 太平天国 / 湘軍 / 長江下流域 / 上海 / 曽国藩 / 李鴻章 / 淮軍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は1860年の太平天国の長江下流域へ進出した後の情況について史料整理を進めた。天京事変後に苦境に陥った太平天国は、この年南京を包囲していた江南大営を再び陥落させ、豊かな蘇州などに進出した。また上海へ逼り、外国勢力と和平条約締結のための交渉を行おうとしたが失敗した。この太平天国の江南下流域進出は、中国で最も肥沃な地域を手に入れるという点では重要な意味を持ったが、その分長江中流域から進攻する湘軍の軍事的重圧を強く受ける結果となり、当時の太平天国首脳部の間でも異なる意見があった。また洪秀全の従兄弟である洪仁カンが行おうとした列強との和平条約交渉は、列強が交渉を拒否したため全く成立しなかった。第二次アヘン戦争で列強が北京を占領する1860年以前は、少なくともNorth China Heraldに見られる外国人の太平天国認識は「清朝よりは提携相手としてましである」といった見解が見られることを考えると、この交渉は遅きに失したことがわかった。 太平天国の蘇州方面の進出については、現在膨大な史料が残されている。档案史料の整理を進めて史料集を編纂したが、大陸で出されたマイクロフィルムの整理状態が非常に悪く、重要な史料を発見できないという事態がしばしば発生した。台湾の国立故宮博物院に残された史料にも限りがあり、分量が膨大であったこともあって史料整理は予定よりも進まなかった。 江南大営の崩壊後、曽国藩は両江総督に任命されて江南の救援に向かうように命じられたが、彼は安慶の攻略を優先してすぐに応じようとしなかった。このように清朝と一定の距離を置いた態度は、結果として咸豊帝死去後の清朝内における権力闘争に湘軍が巻き込まれないで済むという結果を生んだ。その後曽国藩は江南救援のために、李鴻章を派遣して淮軍を組織させたが、これによって太平天国後期の勢力図が出来上がることを確認出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1860年以後の太平天国については、残された档案史料が膨大な数にのぼる。今回はこれらの史料の整理を進めて史料集を編纂したが、大陸で出されたマイクロフィルムの整理状態が非常に悪く、重要な史料を発見できないという事態がしばしば発生した。台湾の国立故宮博物院に残された史料はすでに整理を進めていたが、ある特定の人物の上奏文が欠けており(当時の戦乱によって焼失したと考えられる)、整理、対照作業は予定よりも進まなかった。また日本学術振興会の特別研究員の書面審査を引き受けたため、夏休みを申請書の評価で使うことになり、論文の形で研究成果を残すことが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度として、論文の執筆に重点を置く。史料の整理については、アルバイトを雇うなど方法で効率化を進めたい。また個別の論文以外に、全体像を提示するための単著の出版を計画しており、今年度後半に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
史料整理が進まず、研究計画を達成できなかった。また中国の政治状況が厳しく、学会が中止になったり、史料の閲覧に制約が大きくなったため、代替措置を執ったことも次年度使用額が生まれた理由となった。今年度はアルバイトを活用するなどして史料整理を進め、論文および単著の執筆で研究計画を達成したい。
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Research Products
(1 results)