2015 Fiscal Year Research-status Report
解放後朝鮮における社会・文化史研究-I氏の日記を中心に
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25370843
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
太田 修 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (00351304)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 韓国 / 仁川 / 労働者 / 日記 / 日常生活 / 朝鮮戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度に引き続き、I日記の整理、データ化作業(①スキャンしてPDF化する、②手書きの文章を朝鮮語の原文どおりに起こしてデータ化する、③重要な部分を日本語に翻訳する)を行なった。平成27(2015)年度は、①については、1955年までの日記をPDF化することができた。②については、1952年1月から12月分まで翻刻できた。本年度は、大学院生を雇用して作業を行なった。③については、1949年度と1950年度分がほぼ完了した。 2016年3月には、I氏の生活圏であった地域(現在の仁川広域市東区ソンヒョン洞)のフィールド調査を行なった。I日記にしばしば登場する自由市場(現在は、東仁川駅北出口にある中央市場、通称ヤンキー市場)、I氏がよく通っていた愛館劇場(1926年開館)、I氏の自宅の裏山の水道局山などを踏査した。1950年のI日記には、朝鮮戦争当時に人民軍が駐屯していたことや米軍による爆撃があったことが記されているが、その地理的情報を得ることができた。 2016年2月14日には第301回朝鮮近現代史研究会例会(於神戸市立中等図書館内の青丘文庫)で報告「朝鮮戦争下の日常-ある労働者の日記から」を、同年3月5日には国際シンポジウム「日記からみた東アジアの脱植民地化と冷戦」(主催は同志社コリア研究センター・高麗大学校民族文化研究院、於同志社大学今出川キャンパス良心館305号)で報告「朝鮮戦争下のある労働者の生活-二つの社会、恐怖、平和への焦がれ」を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書の「研究実施計画」に記した予定では、2015年度中に、1948年から1950年6月までのI日記を分析した論文を単行本に掲載することになっていたが、実現しなかった。また、1952年から1953年までのI日記について整理、データ化作業を行ないその成果を報告することになっていたが、実施できなかった。そうした研究の遅れの理由としては、①他の研究プログラム(頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム)の管理、運営に時間をとられたことや、②体調不良が続いたこと、③I日記の翻刻作業とその整理・分析に予想以上の時間がかかったこと、などが挙げられる。 I日記の翻刻、整理・分析作業、成果の公刊が遅れているが、I日記に関連する基本文献調査・収集作業、仁川のフィールド調査などは順調に進んでいる。また、1951年前半までのI日記の分析結果を研究会および国際シンポジウムで報告できた。
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Strategy for Future Research Activity |
I日記の翻刻作業、整理・分析作業の遅れを取り戻すための補充的な作業を行なうとともに、単行本や学術雑誌などでの研究成果の公刊をめざす。
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Causes of Carryover |
日本国内、および韓国(ソウル・仁川)での資料調査を一度しか実施できなかったこと、I氏の日記の翻刻作業が予定通り進まなかったことにより残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度実施できなかった日本国内、および韓国(ソウル・仁川)での資料調査を実施し、I氏の日記の翻刻作業の遅れを取り戻すなど、当初の計画を進める費用として使用する。
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