2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370844
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
森安 孝夫 近畿大学, 国際人文科学研究所, 教授 (70157931)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シルクロード / トゥルファン / 敦煌 / 手紙 / ウイグル / トルコ語 / 中央アジア / 古文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象となる中央アジア出土の古代ウイグル語手紙文書は,10~14世紀の中央アジア東部で活躍した古代ウイグル人が残した生の史料である。古文書の研究には原物調査が必須であるが,現在のように各所蔵機関の努力により,原物のカラー写真がインターネットで公開されるようになりつつある現状を踏まえるならば,原物を実見した上での詳細な古文書学的情報の提供とローマ字転写テキストの作成・公開が,学界を裨益する最良の方法であると認識する。初年度は京都の龍谷大学大宮図書館所蔵のウイグル文書を,P. ツィーメ教授と共に調査したが,2年目に当たる本年度は,現在はベルリンのベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミートゥルファン研究所,並びにサンクトペテルスブルグのロシア科学アカデミー東方文献研究所をツィーメ教授と共に訪問して,それぞれに所蔵されるウイグル文書を調査した。具体的には以下の通りである。 まず8月11日から29日まで,ベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミーにおいて,中央アジア・トゥルファン盆地出土のウイグル文手紙文書のうち,Ch/UとUの分類番号をもつものを調査。森安が古文書学的情報のチェックをした後,森安・ツィーメ両名で古代ウイグル語原文を読み直し,難解な用語については,古代ウイグル語・ソグド語・サンスクリット語・ペルシア語の辞書のみならず,ツィーメがパソコンに集積している膨大な量の近現代トルコ語諸方言辞典のデータベースを駆使しながら議論を進めた。 次いでロシアに移動し,9月1日から5日まで,ロシア科学アカデミー東方文献研究所において,トゥルファン盆地及び敦煌から出土したと思われるウイグル文手紙文書のうち,SIとDxの分類番号のものを調査した。具体的にはベルリンでツィーメ教授と行なったのと同じ作業をここでも繰り返した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツィーメ教授と共に行なった昨年夏のベルリンとサンクトペテルブルグへの出張により,ベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミートゥルファン研究所,及びロシア科学アカデミー東方文献研究所所蔵の古代ウイグル手紙文書については,古文書学的情報についてもローマ字テキストについても,もはやこれ以上は望めないという程度まで調査・研究をやり終えた。もちろんそれで当該ウイグル文書のテキストに不明箇所がゼロになったわけではないが,95パーセント以上は確実なテキストが作成できたと思われる。 ただし解読作業に終わりはないので,一語でも多く解読をするためのおさらい読み合わせのため,帰国後も森安が東京に出張し,ツィーメ教授の自宅である品川区のドイツ語福音教会もしくは駒込にある(財)東洋文庫に赴き,議論を重ねると共に,来年度の調査予定について相談をした。
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Strategy for Future Research Activity |
いよいよ最終年度なので,長年の念願であった『古ウイグル手紙文書集成』を完成させ,しかもそれを世界的に有名なBerliner Turfantexteシリーズにおいて英文で発表できるまでの原稿に仕上げることを目的とする。そのために,ツィーメ教授との読み合わせが未完のパリのフランス国立図書館,ロンドンの大英図書館,中国の新疆維吾尓自治区博物館・吐魯番博物院・敦煌研究院・北京図書館,トルコのイスタンブル大学所蔵のウイグル語手紙文書につき,主に写真を使っての再解読作業を行なうため,森安が東京に出張し,ツィーメ教授が大阪もしくは京都に出張する。 パリのフランス国立図書館,ロンドンの大英図書館所蔵のウイグル手紙文書については,本科研以前に取得した科研費により調査を終え,古文書学的情報の収集はほぼ完了し,良好な写真も入手しているので問題はない。然るに,初年度の交付申請書にも記したように,最近の中国情勢を見ていると外国人学者への根本史料の開放度が落ちてきていて,新疆維吾尓自治区博物館・吐魯番博物院・敦煌研究院・北京図書館所蔵へ文書調査に赴いても,その成果が危ぶまれる。それゆえ中国への出張は断念して,むしろ初年度と同じ京都の龍谷大学大宮図書館所蔵のウイクグル手紙文書の再調査を優先したい。 また原稿の英訳を本格的に進めるため,最終年度は多くの翻訳費用を充当し,さらには森安の携帯用とKWICシステムを利用してグロッサリーを作成するため,最軽量のノート型パソコンを購入し,且つアルバイトの謝金をも計上する。
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