2015 Fiscal Year Research-status Report
清朝雍正年間の八旗改革と旗人官僚の任用に関する研究
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25370846
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
鈴木 真 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (60400610)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 雍正帝 / 后妃 / 乾隆帝 / 八旗 / 旗人 / 吏部 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,前年から継続して『雍正六科史書・吏科』(全83巻)の旗人情報に関する調査と,26~27年度の科研費で購入した『北京図書館蔵家譜叢刊民族巻』(全100巻)の調査をおこなった。 前年度の研究で明らかにしたように,雍正帝の皇子時代(旗王時代)の家臣団には,のちの乾隆帝弘暦の母系氏族であるニオフル氏の一族が所属していた。そこで本年度は,『北京図書館蔵家譜叢刊民族巻』に収録されているニオフル氏の複数の家譜を比較検討し,また『愛新覚羅宗譜』などの官撰の皇族家譜史料の記述と比較することで,乾隆帝の母系氏族が当初は満洲氏族の「ニオフル氏」ではなく,漢人系の包衣人である「銭氏」であったことを指摘した。 ただしかれら「ニオフル氏」=「銭氏」は,雍正帝の在位中は栄達らしい栄達を遂げておらず,また一門近親からも高位の官僚として任用された者は確認できなかった。雍正帝が,単に皇子時代の縁故によってのみ旧臣らを登用していたのではないのと同様,自身の后妃の一族の抜擢・登用についても,それぞれの能力を慎重に測った上で実行していたことがうかがえ,このことは雍正帝の官僚任用の方針を知るための大きな手掛かりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
清朝における八旗の支配構造を解明するための方法として,本研究では旗王と麾下の旗人との関係を洗い出したうえで,雍正帝が実際に官僚を任用するにあたって,それらの関係がどのように影響していたか(あるいはしていなかったか)を考察している。ここまでの研究で,雍正帝が皇子時代の旧臣や后妃の一族を,手駒として自らの影響下に置き続けながらも,即位当初の一時期を除いて,極端な抜擢や登用をおこなっていないという傾向が指摘しうる。 なお平成27年度の成果は,鈴木真「雍正帝の后妃とその一族」(『史境』71,2016)において論文化している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も引き続き,『雍正六科史書・吏科』や『北京図書館蔵家譜叢刊民族巻』などの大型史料集の調査をおこない,有力皇族である旗王とその旗人との関係を示す実例を収集する。また,近々出版予定の『八旗満洲文献集成 第1輯(影印本)』(全10冊,遼海出版社)の調査もおこなう。 上記も含め,これまで諸史料より収集した事例を検討したうえで,雍正帝が他の旗王の麾下にあった旗人やその一族を,どのように自身の直属旗である上三旗に編入し,官僚として登用していったのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行に大いに裨益すると考えられる史料集として,『八旗満洲文献集成 第1輯(影印本)』(全10冊,遼海出版社)が存在する。当初は平成27年秋に出版の予定であったが,現在まで公刊されていない。八旗満洲に関する稀少文献が多数収録されていると考えられるため,研究計画を平成28年度まで延長して,当該史料を購入・精査し,研究に反映させる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記『八旗満洲文献集成 第1輯(影印本)』が平成28年6月に公刊予定であるので,購入予算に充当する。もし公刊がさらに延期されるようであれば,他の清朝史料の購入費用とする。
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