2013 Fiscal Year Research-status Report
18世紀「国民国家化」の時代における宗教ネットワークの研究
Project/Area Number |
25370850
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 杉子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80324888)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宗教 / ネットワーク / 啓蒙主義 / ヴァルド派 / ブコヴィナ |
Research Abstract |
平成25年度は、18世紀後半における宗教的ネットワークの変化を考察するために、1760年代ブリテンによる北イタリア・ヴァルド派およびモルダヴィア公国のプロテスタント・コロニーの支援について、調査を開始した。まず、国内で近世東欧史を研究する小山哲教授(京都大学)黛秋津准教授(東京大学)、海外ではグレアム・マードック博士(ダブリン・ドリニティ・カレッジ)スティーヴン・ローウェル教授(リトアニア歴史学研究所)のご教示をあおぎ、モルダヴィア公国のプロテスタント・コロニーの場所を特定する作業をおこなった。これについては、9月21日~10月3日にルーマニアおよびウクライナのブコヴィナ地方で現地調査を行い、ウクライナのプリィリプチェがコロニーのあった場所ではないかと考えてるに至っている。残念ながら、プリィリプチェはもとより最寄りの都市ザリシュチュケにおいても文献資料はほとんど得られなかった。今後、イギリスおよびポーランドの資料を確認する必要があると思われる。また、1760年代のヴァルド派支援に関しては、7月4日から15日にかけて、イギリス・ユグノー協会のイタリアのヴァルド派谷調査に参加して、トッレ・ペリッチェのヴァルド派文書館で資料調査を行った。そして、当時のカンタベリ大主教トマス・セッカとヴァルド派の書簡を発見・入手することができた。今後はその分析に基づき、ロンドンのランベス文書館のセッカ文書を調査する予定である。 このように現在は、まだ基礎的資料の収集・場所の特定作業をおこなっている段階であるが、今後の研究の手がかりを見いだす事ができたのは、大きな前進である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎的資料の収集・場所の特定作業をおこなっている段階であるが、イングランドのカンタベリ大主教とヴァルド派の書簡の入手およびモルダヴィアのプロテスタント植民地の位置確認など、今後の研究の手がかりを見いだす事ができたのは、大きな前進である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずロンドンにおいて、カンタベリ大主教トマス・セッカをはじめとする1760年代の主要な聖職者の海外プロテスタントとの関係を調査し、1760年代の思潮を理解することが必要であろう。また、当時のブリテンのヨーロッパ進出についても調査をおこない、ブリテンの調査対象地域への利害を把握する必要がある。平成25年度の調査で、ヴァルド派とイングランド側の書簡を発見したのは、大きな手がかりとなるであろう。1760年代のモルダヴィア(現ルーマニアとウクライナにまたがるブコヴィナ地方)にブリテンがどのような利害をもっていたのかは、まだ不明であるが、ブリテンが支援をおこなったプロテスタント・コロニーの場所の特定がほぼ判明したので、当時、ブコヴィナに領地を持っていたポーランド貴族が、ブリテンとどのような関係をもっていたのか調査をおこないたい。まずブリテンの文書館の調査を徹底して行う予定である。
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