2013 Fiscal Year Research-status Report
19世紀ロシア帝国の文化統合における保守思想の役割に関する基礎的研究
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25370852
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
下里 俊行 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 教授 (80262393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロシア / 保守思想 / 歴史観 / ロシア史 / 専制君主 / ポゴーディン / ウヴァーロフ / ナデージュヂン |
Research Abstract |
本年度は、19世紀前半の文部官僚セルゲイ・ウヴァーロフ(1789-1855)の歴史観および歴史教育についての見解、モスクワ大学初代ロシア史教授ミハイル・ポゴーディン(1800-1875)の歴史観およびロシア史観を、それぞれ検討し、彼らがルーシ的エスニシティを必ずしも中心化しない立場から、多エトノス的空間としてのロシア帝国の現状に対応した歴史観を表象していたことを明らかにした。そのうえで、ロシアの過去を否定したチャアダーエフの「哲学書簡」(1836)を掲載した『望遠鏡』誌の発行人ニコライ・ナデージュヂン(1804-1856)の歴史観を検討した。その結果、ナデージュヂンが、ルーシ的な民族的個性(ナロードノスチ)を重視した文芸と歴史叙述の重要性を訴え、イデアといての専制君主に期待をしていたが、『望遠鏡』誌発禁と流刑処分が決定された後には、ロシア帝国の多エトノス性を認めたうえで民衆の口承文芸を研究することの重要性を再認識するようになったことを明らかにした。以上の知見について口頭発表「ニコライ・ナデージュヂンの歴史哲学とロシア史観」(「プラトンとロシア」研究会、2014年3月7日、北海道大学スラブ研究センター)で発表した。その成果の一部を学会誌に投稿し審査の結果、掲載が決定され、現在、印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、19世紀のロシア・保守思想を、アジア、ロシア正教、対抗文化という3つの視点で分析することをめざしたが、現時点ではこの分析視点の妥当性を確認することができ、各思想家の差異と共通性を析出するうえで的確だったといえる。全体として、予定通り、19世紀前半の保守思想の大きな流れを把握することができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成26年度は、当初の計画通り、1840年代以降の保守思想の動向を、特に、文学者や画家の動向に注意を向けながら分析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、2週間にわたる海外出張による資料調査を予定していたが、勤務校における避けがたい公務日程と重複したため、やむをえず海外出張の日程を削減したため、主として旅費の面で次年度使用額が生じた。 平成25年度に生じた次年度使用額については、平成26年度での海外出張による資料調査の日程を、当初の計画よりも延長することによって使用する計画である。
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