2014 Fiscal Year Research-status Report
19世紀ロシア帝国の文化統合における保守思想の役割に関する基礎的研究
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25370852
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
下里 俊行 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (80262393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロシア思想史 / ロシア / 哲学 / 歴史 / 保守思想 / キリスト教 / 神の国 / 摂理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア思想史の画期をなすチャアダーエフの「哲学書間」を自分の雑誌に掲載した編集者ナデージュヂンの思想における永遠・時間・歴史概念を分析した。彼にとって時間とは永遠の模造であり,地上の現象界での時間とは永遠のイデア界である「神の国」に向かう上昇運動を意味していたことを指摘し,彼は,ロシアと西欧との間の文化類型の優劣という問題設定の地平を超越した,全人類の普遍的イデアの形象化という共通の目的に向かって各民族がそれぞれ独自の仕方で上昇すべきであると訴えようとし,その後のロシア・インテリゲンツィヤの進路を規定することになったことを示唆した。 また,1830年代のロシアの代表的な保守思想家達の言説を分析するなかで,検閲体制のもとで正教と専制を支持する保守的な言説の背後にある微妙な思想的ニュアンスを読解した。本論で検討した三人の保守思想家の言説の根底に共通してあったのは「摂理」概念であり,それは一方で被造物の「存在」を正当化するとともに,その存在の将来での「変容」をも承認するものであると同時に「存在」の「否定や破壊」への否定的な姿勢をもたらすものとして機能していたことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り,研究成果を学会誌に2本発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,海外の研究者からのレビューを受け,国際的な水準での研究成果の発表を目指すことにする。
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Causes of Carryover |
出張の日数が勤務校の校務との関係で予定通り確保することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費として使用する予定である。
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