2015 Fiscal Year Research-status Report
19世紀ロシア帝国の文化統合における保守思想の役割に関する基礎的研究
Project/Area Number |
25370852
|
Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
下里 俊行 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (80262393)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ロシア / 保守思想 / 帝国 / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア正教会の高位聖職者層における保守思想の動向を1800~1820年代を中心に分析した。その結果、アレクサンドル1世時代の支配的思潮である神秘主義的プラトニズム的傾向とフリーメイソンの文化潮流に対して、教会保守派として現象したのは、18世紀後半から継承された啓蒙主義的なライプニッツ・ヴォルフ派哲学に立脚した予定調和的世界観および信仰と理性の分離を志向する流れであったことが明らかになった。この流れは18世紀後半では改革の主流を形成していたにもかかわらず、19世紀初頭になると逆にカント哲学に対して否定的な立場をとることで、実質的に観念論を否定する経験主義的な思潮として作用することになった。また、1840-50年代におけるロシア地理学協会における民族学研究における保守思想を分析した結果、民族の概念を言語を中心とする文化的な範疇で捉えようとする保守的な思潮と、それに対して民族を生物学的な実体として捉えようとする進化論的な潮流との確執が明らかになった。これらの成果は、学術論文および学会発表のかたちで公開された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、おおむね順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、19世紀後半における保守思想の動向を分析するとともに、ヨーロッパの保守思想と比較しつつ、ロシア保守思想の特質を俯瞰的に検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
海外出張を予定していたが、勤務校での業務日程と調整することができず、計画通りに出張をおこなうことができなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に計画していた海外出張を本年度に実施する計画である。
|