2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370853
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
徳橋 曜 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30242473)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 近世イタリア / 環境史 / ヴェネツィア / 水 / 森林 / 環境意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は前年度のパドヴァ国立文書館での史料状況の調査を踏まえて、同文書館で史料を収集し、特にFondo Acqueのシリーズのうち、Sentenze per cause di acque e confine tra Verona, Vicenza e Padova (1411-1447)、Atti diversi relative al canal della Battaglie, Bacchiglione e altri corsi d’acqua (1628-1653)、Processo della citta' e del territorio di Padova contro il magistrasto di beni inculti (1559-1629)などを集中的に調査した。そこから河川をめぐるヴェローナ、ヴィチェンツァ、パドヴァの紛争にヴェネツィアが関与・介入していること、パドヴァ領域の河川の流域の紛争に関しては、ヴェネツィア当局ではなくパドヴァの当局が処理していたことが確認でき、その実態の一端を調査できた。 また、ヴェネツィア国立文書館においてSavi ed Esecutori delle Acqueシリーズの史料調査・収集も継続した。特にScritture circa la Laguna, e fiumi Po, Adige, Reno, ed altri (1561-1579)に収められているアルヴィーゼ・コルナーロの提言書や論考の検討からは、当時のヴェネツィアの知識人の意識・関心についての情報を得ることができ、一方、Itinerari, relazioni, visite ecc. dei nobilissimi Esecurtori e periti circa Lidi, Brenta, Bacchiglione, Muson, Adige, Gorzon e Po (1548-1614)に収められている帳簿を分析し、河川管理の在り方を経費から検討することができた。現在、水利委員会が編纂した規定集(capitolari)のうち、1415~1607年の分を分析中である。 これらの調査・分析の成果の一部は、メトロポリタン史学会大会シンポジウムでのコメント、『歴史と地理』での環境関係の史料紹介に反映させた。なお一昨年度から準備中であった水島司編『環境に挑む歴史学』が刊行され、提出後の成果を反映させて修正した論考が掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度はやや遅れが生じていたが、28年度は概ね計画通りに調査・分析が進んだ。ただ、そのなかで改めて明確になって来たのが、ヴェネツィア政府の本土における水利政策の多様さであり、パドヴァをはじめとする本土領の共同体との関わりを追究する必要が認識された。
|
Strategy for Future Research Activity |
29年度は最終年度であるので、これまで収集して来た史料の調査・分析に基づいて、ヴェネツィアの本土における河川管理と特にパドヴァとの関係に力点を置いて考察する。またその成果を論文等の形で発表していく。なお、ヴェネツィア共和国の本土領域における従属共同体との関係との重要性が明らかになったため、その追究をまず進めることとし、当初の問題設定の一部であるマントヴァやフェラーラ等、ポー川流域の他の権力との関係の追究は保留とせざるをえない。本研究課題は29年度をもって終了となることから、この問題の追究は、改めて科学研究費補助金を申請して行いたいと思う。
|
Causes of Carryover |
前年度の繰り越し分があったため、28年度の使用可能額としては当初計画以上のものがあった一方、効率よくイタリアでの史料調査を行うことができたため、年度当初計画を下回る旅費となった。但し、ヴェネツィアの本土領域内部おける水利行政をめぐるヴェネツィア政府と在地共同体との関係により重点を置く方向に研究を見直しつつ進めているので、そのための検証が最終年度にも必要となると予想される。そのため、あえてイタリア出張を1回増やすことはしなかった。以上の理由で次年度使用額が生じたものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は最終年度であるが、上述のように研究の方向性の見直しと今後の研究の方向性につなげるために、2回のイタリア出張を予定している。29年度の当初申請額は50万円であるので、旅費の補足分として次年度使用額を充てる。
|
Research Products
(3 results)