2013 Fiscal Year Research-status Report
ハンガリー・ジャコバン主義における共和政思想の転換とその展開に関する研究
Project/Area Number |
25370855
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
中澤 達哉 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (60350378)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ハンガリー / スロヴァキア / ジャコバン主義 / 共和政 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、1790年代のハンガリー・ジャコバン主義における共和政思想の特性を、前期(1792-93年)の「王のいる共和政」論から後期(1793-95年)の「王のいない共和政」論への転換過程に焦点をあてつつ、縦軸としては中世ハンガリーの共和主義的伝統と啓蒙絶対主義期のヨーゼフ主義的伝統、横軸としてはフランス・ジャコバン主義のほか、ヨーロッパにおけるジャコバン主義ネットワークの機能を重視しながら総合的に解明することを目的とする。 初年度にあたる平成25年度は、まず①方法論的な分析枠の構築、②個別的な実証研究を進めるための史料収集と分析、という2 つの基礎作業を重点的に行った。①は、ハンガリー王国の後継国家におけるハンガリー・ジャコバン主義に関する最新の先行研究の整理と批判的検討(特にスロヴァキア史学)、他のヨーロッパ地域(特にオーストリア)におけるジャコバン主義およびジャコバン・ネットワークに関する研究文献の整理と批判的検討、急進的ジャコバン主義全般に関する理論的研究の整理と批判的検討を行った。②については、7月と9月に、スロヴァキア国立文書館とオーストリアの国立文書館、スロヴァキア科学アカデミー歴史学研究所図書館とコメニウス大学図書館に訪問して、ハンガリー・ジャコバン主義運動に関する膨大な未刊行および刊行史料、ならびに研究文献の収集を行った。また、史料解読にあたっては、スロヴァキア共和国マーチャイ=ベル大学教授ドゥシャン・シクヴァルナ氏およびハンガリー共和国中欧大学准教授バラージュ・トレンチェーニ氏に専門知識の教授をお願いし、数回の研究打合せを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初不足していた約1500頁にのぼる重要刊行史料集Benda Kalman, A magyar jakobinusok iratai, Vol.II (Akademiai Kiado, 1952-57)の全コピーを入手し、その解読を開始することができたのは、研究上、非常に大きな進展であった。クロアチア史学によるハンガリー・ジャコバン主義の研究文献があと数点ほど必要だが、すでに文献の所在も確認しているため、平成26年度初頭に即入手可能である。以上より、研究はおおむね順調に進展しているといってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成26年度は、①方法論的な分析枠の構築と②個別的な実証研究を進めるための史料収集と分析、を継続して行う。①については、前年度に収集できなかった文献があったのでそれを至急補う。これによって必要研究文献の収集は終える。②については、「後期ジャコバン主義思想の展開と終結過程」に関する未刊行史料を収集し、その分析を進める。従来の研究は、1794 年5 月に急進派貴族を糾合するためにマルティノヴィッチによって執筆された「改革派秘密協会問答書」と、同年同月執筆の市民向けの「自由と平等協会問答書」をもとに、後期ジャコバン主義の「王のいない共和政」論の特質(反君主制・革命的民主主義・政治的自由主義・連邦共和制)を抽出する傾向があった。しかし、後期ジャコバン主義の全容の解明はこれら2 つの史料のみでは不十分である。ハンガリー国立文書館フォントR311 の未刊行史料を中心に収集し、より詳細な分析を試みたい。 具体的には、前期の「王のいる共和政」論にいかなる変容が加えられ、後期の「王のいない共和政」論が展開していくのか、帝政当局によって実際には何が危険思想と認識されジャコバン派が逮捕され処刑されるに至ったのかを主に検討する予定である。申請者の予備的調査によれば、これらの解明には1794 年のジャコバン派逮捕後の警察取調史料(同じくハンガリー国立文書館収蔵)が有用である。ハイノーツィとマルティノヴィッチの両者が当局の取調に対して自らのジャコバン主義運動全般を回想・述懐した貴重な史料である。 最終年度の平成27年度に予定している研究の総仕上げに向けて、平成26年度は以上の取り組みを行いたい。
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