2015 Fiscal Year Research-status Report
国際人道支援のチャリティ的起源に関する研究――近代イギリスを中心に
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25370857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (70337757)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チャリティ / イギリス / 国際人道支援 / セーブ・ザ・チルドレン / エグランタイン・ジェブ / 第一次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、1919年に創設され、現在に至るまで世界中で不利な境遇に苦しむ子どもの救済に尽力している巨大な国際NGO、セーブ・ザ・チルドレンの起源を、イギリスのチャリティの文脈の中で検討した。わが国にも支部があるにもかかわらず、同団体に関する歴史的研究は、わが国では皆無といってよい状況にある。一方、同団体の創設者エグランタイン・ジェブの故国イギリスを始めとする英語圏では、たしかにジェブに対する関心は高く、近年ではLinda MahoodのFeminism and Voluntary Action: Eglantyne Jebb and Save the CHildren, 1876-1928 (2009)が、ゆきとどいた伝記情報を提供してくれている。セーブ・ザ・チルドレンの萌芽が、ジェブのイギリスでのチャリティ実践に顕著にあらわれていたことを指摘する点など、本研究にも裨益するところが大であった。 本研究では、Mahoodの研究成果を摂取しつつ、とくに第一次世界大戦中の情報統制と敵国憎悪をあおるプロパガンダの只中にあって、敵国の女性や子どもたちの窮状を敵国・中立国の新聞の翻訳・紹介によって伝えていた『ケンブリッジ・マガジン』に、ジェブが深くかかわっていたことに着目した。同誌の記事の網羅的な分析を行った結果、戦時下にジェブがどのような種類の貴重な情報に接していたのかを明らかにすることができた。 愛国心と敵愾心の分離、そして愛国心と利他主義の(再)結合こそ、ジェブが同誌での経験を通じて到達した知見であり、セーブ・ザ・チルドレンの初期の核となったものであったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」で記したとおり、当初計画の順序を少し入れ替えて、セーブ・ザ・チルドレンの研究に充てることにしたが、年度末には、成果の一端を書物の中の一章に入れることができた。以上の理由から、研究はおおむね計画通りに進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度には19世紀半ばのアイルランド大飢饉に対するブリテンをはじめとする諸国からの人道支援を究明し、27年度には第一次世界大戦前後の時期におけるセーブ・ザ・チルドレンの生成の仕方を検討した。本年度は、これらを受けて、国際赤十字をはじめとする国際NGOの、19世紀後半から20世紀前半における展開過程を追跡してゆきたい。
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Causes of Carryover |
順当に支出していったが、当該残額では必要な洋書等の購入ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の助成金の一部と当該残額をあわせて必要な洋書等を購入することとし、その他についても、当初の計画通りに使用してゆく。
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