2013 Fiscal Year Research-status Report
コメンスキー学校の近現代史ー少数民族教育の生きる道
Project/Area Number |
25370860
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大津留 厚 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10176943)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / 第二次世界大戦 / ナチ政権 / チェコスロヴァキア / オーストリア=ハンガリー / コメンスキー・シューレ / 少数民族保護 |
Research Abstract |
2013年度は2014年の第一次世界大戦開戦100周年に向けて多くの研究が組織された。コメンスキー・シューレが活動したオーストリア=ハンガリーは、帝位継承者が暗殺されたことへの報復としてセルビアに宣戦を布告して、第一次世界大戦の口火を切ったことはよく知られている。研究代表者はオーストリア=ハンガリー史研究者として、第一次世界大戦研究の国際的な展開に積極的に参加し、研究の発信を行った。 本研究に関係して、2013年8月にはオーストリアのウィーンに滞在し、コメンスキー・シューレ文書館で史料収集に当たった。その際一つのテーマになったのが第一次世界大戦下ウィーンのコメンスキー・シューレの活動だった。コメンスキー・シューレは一方でチェコ系の教育機関として、当局から不信の目で見られたが、他方で総力戦体制下、緊張を強いられた子供たちの生活に配慮も示されたことが明らかになった。 今回の調査でもう一つの収穫だったのは、第二次世界大戦下、ナチ政権のドイツに併合されたウィーンで教育活動をしていたコメンスキー・シューレの研究を当時の職員会議の議事録を見ることで進めることができたことである。以前の研究では、コメンスキー・シューレはナチ政権ドイツの支配下で閉鎖に追い込まれたことを明らかにしたが、今回の調査でその後もコメンスキー・シューレが教育活動を続けていたことが判明した。その辺りの事情について研究することは今後の課題として残された。 2014年度の現地調査では大戦間期のコメンスキー・シューレの活動が主な対象となる。「チェコスロヴァキアの独立」と「少数民族保護」という体系の中での少数民族初頭教育機関としてのコメンスキー・シューレの生き様を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀後半にコメンスキー・シューレが教育活動を始めるにあたって、その枠組みになったのは、アウスグライヒ体制と呼ばれるオーストリア=ハンガリーの独特の国制と、民族の平等を規定したオーストリアの基本法との体系だった。研究代表者は『ハプスブルク史研究入門』においてその体系を歴史的に位置付けることを試みた。 2014年の第一次世界大戦開戦100周年を前に国際的に大戦研究が進む中で、研究代表者はオーストリア=ハンガリー史研究者として積極的に発言したが、それによりコメンスキー・シューレ研究にも新たな視点が得られることになった。 2014年度の調査研究に向けて確実な基盤を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コメンスキー・シューレ研究の推進のためには、何よりも現地での史料収集が重要である。コメンスキー・シューレの関連文書は、プラハのチェコ国立文書館の管理の下で、ウィーン3区にあるコメンスキー・シューレに所蔵されている。2014年度もここでの調査研究が研究推進のために欠かせない。 しかし同時にオーストリア=ハンガリー史全般の民族政策との関連を視野に置く必要があるとともに、総力戦としての第一次世界大戦期、大戦間期、ナチ政権の支配下に置かれた二次世界大戦期それぞれの時代の特殊性も考慮しなければならない。 今年度は第一次世界大戦開戦100周年に当たり、世界各地で研究会が予定されている。その成果を積極的に取り込みながらコメンスキー・シューレ研究を展開していきたい。
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