2014 Fiscal Year Research-status Report
コメンスキー学校の近現代史ー少数民族教育の生きる道
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25370860
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大津留 厚 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10176943)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / ハプスブルク帝国 / オーストリア / コメンスキー学校 / 少数民族 / 民族教育 / 公的権限 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は第一次世界大戦勃発100周年に当たり、特にその原因と言えるサラエヴォ事件の一方の当事者であったオーストリアではこの100年を回顧する試みが行われた。日本では、本研究代表者の属する神戸大学に近い、兵庫県青野原で230名ほどのオーストリア=ハンガリー兵が捕虜として収容されており、それを回顧する展示会をオーストリア大使館と共同して開催した。 第一次世界大戦は人類が初めて経験した総力戦として考えられているが、それは戦線が膠着する中で、国民生活の全てが戦争に動員されていく様を表現したものであった。その中で子どもの世界もまた戦争と深く関係していたことが、最近の研究によって明らかにされている。本科研の研究対象であるウィーンのチェコ系小学校コメンスキー学校は、ドイツ語が支配的なウィーンでチェコ語を授業語として使用する学校として、公的な権限が与えられず、平時にあってもドイツ語で授業をする学校に比べて不利な立場に立たされていた。総力戦下のウィーンでは学校の教員が戦場に狩り出され、資源も逼迫し、国民的な統合が求められる中で、より厳しい状況にあった。 2014年度のウィーン・コメンスキー学校における史料調査では、第一次世界大戦下におけるコメンスキー学校の教員会議の議事録や校長アスマンの手紙を分析し、厳しい状況の中でチェコ語を母語とする子どもたちがドイツ語を主として使用するウィーンで生きて行くための教育の実践を行っていたことを明らかにした。また第一次世界大戦が終わった1918年末のコメンスキー学校が有した期待と不安を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、大戦間期に重点を置く予定であったが、現実には前年度に続いて第一次世界大戦下のコメンスキー学校の調査分析にとどまった。それは2014年度が大戦勃発100周年に当たり、ヨーロッパ各国で多くの研究が出され、それに啓発される形でコメンスキー学校研究でも新たな視点からもう一段深める必要があったからである。その点では大きな収穫があったと言える。また大戦間期にも展望が持てたので、2015年度は大戦間期のコメンスキー学校について調査研究を進めるとともに、最終年度として成果の発信に取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は第一次世界大戦下のコメンスキー学校の教育活動について深めることができたので、その上に立って大戦間期の研究を深めていく。ハプスブルク帝国の崩壊、チェコスロヴァキア国家の成立という国制の大きな変化はコメンスキー学校の在り方を大きく変えることになった。それが大戦直後のコメンスキー学校の期待と不安に表れていたが、実際にウィーンでは、一方で公立のチェコ系小学校が設立されながら、コメンスキー学校には公的権限が与えられないという事態が継続することになった。その辺りの事情について、コメンスキー学校所蔵史料とともにウィーン市文書館の教育委員会関係文書についても調査研究を行う。
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Causes of Carryover |
為替の変動によるもので問題はないと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度として、ウィーンのコメンスキー学校での調査研究を行う。次年度に刊行される関連文献を購入する。
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