2013 Fiscal Year Research-status Report
近世フランスにおける外国人と都市社会――16・17世紀のリヨンを中心に――
Project/Area Number |
25370861
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小山 啓子 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (60380698)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近世フランス史 / 都市史 / リヨン / 外国人 / 同郷団 |
Research Abstract |
これまで私は、16世紀フランスの都市リヨンを事例として、内的な連帯と自律性を保持していた地方都市の社会を、広域権力である王権との関係や交渉のダイナミズムに注目しながら分析を行ってきた。この研究において、中世末期から近世初頭にかけてのリヨンが大市開催都市として発展する中で数多くの移民を受け入れており、担税帳簿によれば16世紀前半には人口の約3分の2が市壁外出身者であり、少なくとも1560年頃までは、こうした外国人も組み込む形で都市内の一体性が保たれていたことを明らかにした。さらにリヨンの外国人はこの時期においては閉鎖的な居留地を形成することなく、大司教座教会サン=ジャン大聖堂から両替広場に至る中心地に混在して居住していたことが判明した。 このようにリヨンは16世紀に「他者」を受け入れる新しい事態に直面していたわけであるが、こうした外来者は実際どのように居住地に入り込み、どのように定住を選択したのであろうか。都市の外国人は出身地ごとに、相互扶助団体であり自治組織的な同郷団を結成していた。本年度は特に、規約を作成し、市参事会に定期的に代表を派遣していたフィレンツェ同郷団に焦点を当て、その規約内容に立ち入ることによって、都市の外国人と都市当局の関係のあり方を考察した。 分析対象とした本規約は、バチカン図書館のスウェーデン女王クリスチーナ・コレクションに分類されている「リヨンにおけるフィレンツェ同郷団関係史料」に収められている。本史料群は19世紀にA. Roucheによって転写、抜粋され、リヨン市文書館に所蔵された。今回はこのRoucheの史料を用いて規約の内容を検討した。本規約により、同郷団結成の目的、都市における同郷団の法的地位、同郷団入会者間の決まりごと、遺産没収権との関係などが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年1月21日に出産し、その前後に産休を取ったため、本年度は当初予定していたフランスでの資料収集や研究打ち合わせを行うことができなかった。また妊娠に伴う体調不良の時期には、新たな研究動向の追跡・把握など研究の進展に不可欠な作業も難しかったが、可能な範囲内で情報収集を行い、必要な資料を入手することはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
同郷団の存在は、外国人が都市の中で1団体としてアイデンティティを固持し、在地社会には溶け込もうとしなかったような印象を与える。彼らは、帰化状や市民権を取得し、「同化」しようとはしなかったのだろうか。フランスでは外国人が財産を残して死去した場合、その相続権は国王にあるとする遺産没収権が定められており、死後自らの子弟に財産を相続するには帰化が必要であった。外国人が帰化を準備するのは、複数の次元に及ぶ多様な背景がある。祖国の政治的圧力や雇用機会、家族戦略、財産保護要求など複合的要因が帰化の直接・関節の契機となると同時に、居住都市社会の受け入れ環境も影響を及ぼしたと思われる。 しかし都市民として「同化」するためには、今まさに居住している都市の市民権が必要であった。近世における帰化と市民権の関係は極めて複雑であり、この点を取り上げた論考はまだない。現在までに申請者が調査したところによれば、市民権の取得は家門や職業上の志向と関連していることが指摘できるものの、さらに多くの事例を調査する必要がある。同郷団関係史料に加え、帰化登録簿の分析を行いながら、外国人の統合と排除についての歴史的事実を確認していきたい。 そのうえで、さらにフィレンツェ出身のガダーニュ家などいくつかの家系に絞って、彼らの人脈形成や政治的活動を調査する予定である。その理由は、彼らがリヨンを足場に経済的繁栄を築いた後、土地を集積して都市行政に関与し、後に官職の購入と婚姻戦略を通じてフランス王権の中央政府へと上昇していくことが判明しているからである。こうした家系の発展のあり方を通じて、リヨンもまたその都市的性格を変えていく側面があると考えられる。 史料収集・分析を継続していくと同時に、得られた研究成果は、学会・研究会等で発表することを目指している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年1月21日に出産し(本年度の計画を作成する段階ではまだ妊娠していなかった)、そのために予定していた資料収集や研究打ち合わせを目的とするフランス出張計画を遂行することができなかった。 本年度の計画はそのまま次年度執り行うものとし、パリおよびリヨンでの資料調査・収集・研究打ち合わせを行うこと(外国旅費として使用)を予定している。
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Research Products
(1 results)