2014 Fiscal Year Research-status Report
ワイマル期からナチ期におけるドイツ・シオニズムの動向に関する研究
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25370864
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長田 浩彰 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40228028)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現代史 / ドイツ・シオニズム / ワイマル期 / ナチ期 / ゲオルグ・カレスキー / ドイツ・シオニスト連合 / ユダヤ民族党 / 国家シオニスト組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「シオニスト連合」と以下に述べる「ユダヤ民族党」「国家シオニスト組織」の対抗という図式で、1919年から1938年の間のドイツ・シオニズムの動向を、特に反主流派のゲオルグ・カレスキーの思想や行動を分析することで解明していく。1917年のバルフォア宣言を経て、ユダヤ人国家建設の可能性が現実味を帯びる中、「シオニスト連合」もワイマル期には、パレスチナでの国家建設への支援に活動の重点を置いた。「シオニスト連合」指導層のこういった活動路線に対して、この組織内部の一般メンバーから異議申し立てが始まる。それがワイマル期には「ユダヤ民族党」であり、ナチ期には国家建設で「シオニスト連合」に先んじようとする「国家シオニスト組織」であった。カレスキーはそれらを率いた人物である。 研究代表者は、昨年度訪れたドイツ連邦共和国ケルン市ゲルマニア・ユダイカ及び、イスラエル国エルサレム市にあるユダヤ民族史中央文書館 Central Archives for the History of the Jewish People (CAHJP)でデジタルカメラにより収集したカレスキー関係文書やドイツ・シオニズム関係の史資料の分析を行う一方、ワイマル期のドイツにおけるユダヤ・ゲマインデ関係の史資料を、再度ゲルマニア・ユダイカを訪れることで収集した。さらに、研究の途中経過について、平成26年度九州史学会大会西洋史部会(2014/12/14:九州大学)と「シンポジウム『第一次世界大戦とユダヤ人』」(2015/1/31:大阪大学)において、それぞれ個別報告を行った。史料調査のため予定していたイスラエル訪問については、政情不安のため、次年度に遅らせることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画においては、ドイツ連邦共和国ミュンヘン大学歴史文化学部歴史学ゼミナール(ユダヤ人の歴史と文化)を訪れ、Prof. Michael Brennerから、本研究に関するレビューを受ける予定であった。それは、ブレンナー教授が「ユダヤ民族党」を扱った修士論文を1988年に提出し、雑誌論文として公刊していたからである。しかしブレンナー教授は客員教授としてアメリカに行っておりかなわなかった。さらに、予定していた再度のイスラエルの文書館訪問も、2014年7月のイスラエルによるガザ侵攻という状況で、見送らざるを得なかった。ただ、ゲルマニア・ユダイカを再度訪れて、ワイマル期のユダヤ・ゲマインデに関する史資料を更に収集することが出来た。つまり、史料調査・収集という点では、一歩前進という程度で進んでいる。 研究成果報告という点では、「ワイマル期以降のドイツ・シオニズムの動向に関する一考察―ユダヤ民族党とゲオルグ・カレスキー(1878-1947)」(九州史学会大会西洋史部会:2014/12/14:九州大学)と、「第一次大戦からワイマル期にかけてのドイツ・ユダヤ人―第一次大戦がドイツ・シオニズムにもたらしたもの」(「シンポジウム『第一次世界大戦とユダヤ人』」2015/1/31:大阪大学)として学会報告を行った。特に後者については、報告依頼を受けての招待講演である。この点で、予定以上に進めることが出来た。 以上から、本研究に関しては、おおむね順調に進展しているという判断になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に関しては、次のように計画している。 1、研究テーマに関する史資料・文献目録をさらに拡充し、研究文献を購入する。 2、再度ドイツ連邦共和国ケルン市ゲルマニア・ユダイカ、ミュンヘン大学歴史学ゼミナールを訪れ、研究動向の把握や、さらなる史資料の収集にあたる。 3、これまで訪れなかった、イスラエル国エルサレム市にあるCentral Zionist Archives (CZA), Yad Vashem Archives (YV)の両文書館を訪れ、史料調査・収集を行う。本研究が注目するドイツ・シオニストのゲオルグ・カレスキーに関する未公刊の個人資料や文書類は、YVやCZAにも所蔵されていると思われる。またユダヤ民族史中央文書館を再度訪れ、前回の訪問で未収集の史料を収集する。 4、収集した史資料の読解と分析を継続する。そして、学会及び学術雑誌等で成果を発表・公表し、研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
2014年夏のイスラエルによるガザ地区への武力行使の結果、治安状況がその後も安定せず、平成27年3月に計画していたイスラエル・エルサレム市の文書館での史料調査・収集を次年度に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
イスラエル国内での国政選挙が終了し、政権が発足して政情が安定するであろう夏以降に、26年度末に計画していたエルサレムでの史料調査・収集を行うこととした。現時点では、平成27年8月22日から27日に訪問することとし、調整中である。また、同年9月には、再度ドイツを訪問することも計画している。研究の最終年度であるので、10月には研究成果を学会で報告するつもりで準備しており、8月と9月の史料調査の成果も、それに盛り込んでいくつもりである。
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Research Products
(2 results)