2017 Fiscal Year Annual Research Report
Functions of Post-primary School and Gender in Changing Society: Vocational School in Late Imperial Russia.
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25370870
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
畠山 禎 北里大学, 一般教育部, 教授 (60400438)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロシア / 女子教育 / ジェンダー / 職業教育 / 身分 / 階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度までに調査・収集した史料の分析を進めた。その結果、帝政末期ロシアにおける職業教育とジェンダーの関係性について、ロシア政府や民間教育活動家がヨーロッパ女子職業教育活動家のジェンダー観に影響を受けつつ、ロシア社会の身分的階層的・エスニシティ的秩序を考慮したうえで独自のジェンダー観を構築し、女子職業教育を推進していった過程が明らかになった。 本年度の研究成果として、論文を発表し、研究会で報告を行った。論文「女子職業教育の拡張とロシア帝国の女子職業教育政策」は、1890年代前半まで女子職業教育に対する政府の関心は総じて低く、その目的は教育機会の身分的・階層的秩序の維持にほぼ限定されていたこと、商工業の急成長と女子職業教育需要の拡大を経験した90年代末以降、政府は女子職業教育事業に積極的に参画し、家庭生活の実用的知識・技能を訓練したり熟練労働者を養成したりするようになったことを確認した。 研究会報告「帝政末期ロシアにおける職業教育機関卒業生の進路とジェンダー」は、男女職業教育の比較検討をテーマとした。男子職業教育はロシアの産業発展や科学技術の発展と直接的に関係する技術教育を中心とし、下位身分・階層出身者が生存手段を獲得しただけでなく、学歴・資格(熟練)・卒業生の紐帯を足がかりに社会的上昇機会を獲得した。一方、女子職業教育は家庭での妻・母親役割を強調し、産業発展や科学技術との関連性の小さい裁縫教育を特色とした。手芸教員として就職し自立する道も開かれていたとはいえ、総じて卒業後の社会的上昇機会は小さかった。 ただし、前年度までの調査では、政府や民間教育活動家がどのようにジェンダー観を構築していったのか、より具体的に明らかにすることができなかった。この点についても、サンクトペテルブルクのロシア国民図書館、ロシア国立歴史文書館(RGIA)にて追加調査を行うことができた。
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