2013 Fiscal Year Research-status Report
近世フランスにおける権力の再編と宗教ーーパリとカトリック改革
Project/Area Number |
25370872
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
高澤 紀恵 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (80187947)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カトリック改革 / 絶対王政 / 都市 / 近世 / 権力 |
Research Abstract |
2013年9月末よりフランスに滞在し、当該テーマに関する調査を行っている。国立図書館において刊行史料の調査はほぼ終了し、2014年春より国立古文書館で手稿史料の調査にあたっている。また、社会科学高等研究院のロベール・デシモンのゼミに定期的に参加し、ロベール・デシモンをはじめフランス近世都市史の専門家たちとの意見交換を行っている。この間、2013年11月にはソルボンヌ大学での研究会において、本研究の中間報告的な発表をおこなった。 こうした調査、討議の結果、フィールドとして選んだ17世紀中葉のパリのサン・ポール教区のミクロな対立構造が次第に明らかになっている。1633年から64年まで司教職をつとめたニコラ・マジュールは、前期には篤信派の聖体会のメンバーであったが、後期には熱心なジャンセニストとなり、この教区に拠点をおくイエズス会はじめさまざまな緊張がうまれていく。サン・ポール教区は、17世紀フランスの政治・宗教の最もホットな対立の最前線の位置にあることがはじめて判明し、フランスの研究者たちからも当該研究の成果を期待されている。現在は、国立古文書館において1660年代の教区財産管理委員会の議事録を読み、その分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、当該研究の中間的報告は、2014年度の6月頃に行うことを想定していた。しかし、日仏2国間交流でのシンポジウムで報告することが求められたため、フランスでの調査初期の2013年11月に報告を行うことになった。これは、当初の計画とずれた点である。さらに、このシンポジウムが成功裡に終わり、史学史的に大変意義のある成果があったので、岩波書店『思想』編集部と交渉し、2014年8月に特集号を出すことになった。この企画の責任者として、また日仏歴史家の媒介者としての仕事が増えたことも、当初の計画にはなかった点である。日仏歴史家の交流は、3年後に研究書を共同で執筆し、日仏同時出版を目指す段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本務校の特別研究期間(2014年8月31日まで)を最大限に利用し、現在読んでいる議事録の分析を修了させる。17世紀サン・ポール教区に関する史料体を概ね把握することも、大切である。加えて、マジュール期の教区財産管理委員会をプロソポグラフィックに再構成することも、フランスに滞在しなくてはできない調査であるので、これを修了することが、さしあたりの目標である。 9月以降は、17世紀ジャンセニスムに関する分厚い研究蓄積を渉猟し、マジュールらジャンセニスト司祭のネットワークをパリの都市空間の中で分析し、サン・ポール教区の占める位置を確認していく作業に着手する。2015年3月には、再度フランスに赴き、ロベール・デシモンをはじめ社会科学高等研究院の研究者たちにその成果を伝え、意見交換を行う。2015年年度からは日仏で本格的に成果を発信する段階とし、2014年度中はその準備をすすめたい。
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Research Products
(3 results)