2015 Fiscal Year Research-status Report
近世フランスにおける権力の再編と宗教ーーパリとカトリック改革
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25370872
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
高澤 紀恵 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (80187947)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近世 / フランス / 宗教 / カトリック改革 / パリ / 権力 / 絶対王政 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の課題「近世フランスにおける権力の再編と宗教――パリとカトリック改革」に関しては、当初の計画通りパリのサン・ポール教区を具体的なフィールドとし、教区に残る史料を通して17世紀中葉の司祭をめぐる複雑な対抗関係の分析をすすめた。当初の予想に反して、当該司祭がジャンセニストであったため、分析は予想外に時間がかかることとなったが、それだけにサン・ポール教区の研究が17世紀の政治と宗教の関係を考える上できわめて有効なフィールドであることが判明した。この分析の結果、17世紀パリにおいて、宗教は人びとの統合装置となるだけではなく、人びとに葛藤をもたらす対抗軸の一つとなり、教区民の間に緊張をもたらしていた諸相が明らかとなった。とりわけ、ジャンセニスムは、18世紀の教区政治に影響を与えたことはよく知られているが、少なくともサン・ポール教区においてはすでに17世紀中葉において大きな亀裂を教区にもたらしていた。本研究から、その具体的契機、論点が明らかになってきたことは大きな成果である。また、ジャンセニスムがパリにもたらされる以前から、教区内の修道会(サン・ポールにおいてはミニモ会)と教区司祭の間で訴訟が繰り返されていた実態が明らかとなり、教区司祭がジャンセニズムに惹きつけられる背景のひとつであったと考えられる。こうしたミクロな権力関係とその変容過程のの分析をさらに進めることを通して、絶対王政とよばれるフランス王権と宗教との緊張を伴った関係を明らかにしていけるとの展望を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画では、2015年度中にフランスよりアンシアン・レジーム研究の第一人者であるロベール・デシモン氏(社会科学高等研究院)を招聘して、国際研究集会を開催する予定であった。しかし、氏の都合により、招聘は2016年5月に実現することとなった。それゆえ、当初の計画と数ヶ月のズレが生じているが、その分時間をかけてこの研究集会の準備、デシモン氏の原稿の日本語訳などに取り組むことができた。このズレ以外は概ね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年5月にフランスの社会科学高等研究院よりロベール・デシモン氏を招聘し、国際研究集会を開催して問題のマクロ化と方法的錬磨を図る。具体的には、5月6日の京都大学での講演会、14日、15日両日の東京日仏会館で研究集会を開催する。後者においては、当初の計画通り、フランス史のみならず、イギリス史、日本史の近世研究者をコメンテーターとして招く予定である。 さらに、2016年度秋から冬にかけて、ヨーロッパ近世史研究会と宗教改革史研究会との合同で、近世における政治と宗教をめぐる現在の研究水準を確認し、これまで個々に行われていた研究成果をつきあわせる共同討議を企画している。また、これらの成果を刊行する出版計画を着実に進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に実施予定であった国際シンポジウムの開催が、招聘研究者の都合と合わず延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際シンポジウムの開催費に充てる。招聘者への謝金、旅費、資料翻訳や当日の同時通訳、会場設営補助などに使用する予定である。
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