2014 Fiscal Year Research-status Report
西方地中海におけるフェニキアとカルタゴ-宗教的側面からの分析を中心に
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25370875
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 育子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (80459940)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェニキア / カルタゴ / タッシルジ(マルタ) / キティオン(キプロス) / 聖域 / アシュタルテ崇拝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フェニキア人の海外発展の諸段階を特に宗教的側面から検証することにより、カルタゴおよび西方の植民諸都市と母市フェニキア都市との関係を考察することにある。 平成25年(2013年)10月に行ったサルディニアでの調査の状況については、平成26年7月の第21回ヘレニズム~イスラーム研究会で口頭発表(12月に論文発表)し、さらに10月の日本オリエント学会第56回大会では、平成26年(2014年)3月に行ったスペインの調査の成果も踏まえて報告した。特に、西方のフェニキア系植民都市同士の類似性に着目し、のちに母市であるフェニキアを凌駕して西地中海の覇権を握るカルタゴとの関係も考慮に入れつつ検討した。その結果、サルディニアやスペイン(イビサ島)ではその編年において、墓制や葬送儀礼の側面から、「フェニキア的段階」と「カルタゴ的段階」を明確に区分して考えることを改めて確認できた。 11月には、サンディエゴで開催されたアメリカ・オリエント学会の2014年度年次大会に参加したが、特に「カルタゴの幼児犠牲に関するワークショップ」では、海外の研究者との情報および意見交換が出来て非常に有意義であった。また、平成27年(2015年)3月のキプロス踏査に先立って、アメリカにおけるキプロス考古学の現状を窺い知ることができたことは収穫であった。 平成27年3月8日から22日にかけて、現地の遺跡の状況と博物館等での史料情報の収集を主な目的として、マルタとキプロスでそれぞれ1週間程度の海外調査を行った。フェニキア人の海外発展に伴い、本土で崇拝された神々が地中海各地に伝播していく過程は、女神アシュタルテの信仰に顕著にみてとることができるが、マルタ島のタッシルジの聖域や、キプロス島のキティオンでのアシュタルテ神殿の事例から非常に興味深い知見が得られ、今後の研究で両者を比較検討して行く必要性を感じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していた平成26年夏のマルタ・キプロス踏査は、家庭の事情(実父の死去)により中止を余儀なくされたが、平成27年3月に延期して行うことが出来た。また、平成27年1月25日にフェニキア・カルタゴ研究会主催の第1回公開報告会を行い、平成25年度に行ったサルディニア・スペインの海外踏査の成果を、社会に向けて発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、海外での現地調査は基本的には予定していない。平成25年度のサルディニア、スペインでの調査、および平成26年度のマルタ、キプロスでの調査の成果を集大成してまとめていくことに主眼を置く。平成26年度に引き続き、7月のヘレニズム~イスラーム考古学研究会、10月の日本オリエント学会での発表と、フェニキア・カルタゴ研究会主催の第2回公開報告会を秋以降に予定している。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金の支出用途がなかったこと、および図書の購入で間に合わなかったものがあったので、物品費の支出がやや抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の費用配分は3年間でもっとも少額(200,000円)であるので、図書の購入などの物品費、学会出張のための旅費などの経費の不足分に今年度の残額分を充当したい。
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