2013 Fiscal Year Research-status Report
北東アジアの後期旧石器時代における剥離技術の変容に関する研究
Project/Area Number |
25370883
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高倉 純 北海道大学, 文学研究科, 助教 (30344534)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 剥離技術 / 動作連鎖 / 押圧剥離法 |
Research Abstract |
本研究では、北東アジアの後期旧石器時代における剥離技術の変容において重要な画期となっていた、有機質剥離具による直接打撃法、ならびに押圧剥離法を適用した石刃や細石刃の剥離技術の出現に関して、地域ごとの様相の把握をおこなうことを目的としている。今年度は、北海道と本州ならびに中国北部での関連資料の検討をおこなった。対象とする資料は、有機質剥離具による直接打撃法、ならびに押圧剥離法が出現したと想定される最終氷期最寒冷期(LGM)前後の石器群である。日本国内の北海道および本州では、接合資料を含めた実物資料の分析に取り組んだ。対象とした資料体に関しては、接合資料の観察・検討にも基づきながら、石器群全体の剥離工程の復元をおこなうとともに、フラクチャー・ウィングの分析により剥離方法の同定も試みた。結果的に、多くの細石刃石器群において押圧剥離法による細石刃剥離がおこなわれていたことが明らかにできた。剥離方法の同定対象には、細石刃や細石刃核の調整剥片類だけでなく、伴う石刃も含めた。中国北部の資料に関しては、関連資料のリストアップならびに文献集成を実施し、石器群が帰属する年代の精査や分布の確認を終了させた。 今年度は、本研究の成果を公表するため、国際学会で2回(日本・東京、ルーマニア・ヤシ)、国内での学会で1回(シンポジウム「日本列島における細石刃石器群の起源」:長野県御代田市)、口頭発表をおこなった。また関連する英文論文を1本、和文論文を1本発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国内での資料分析は順調に進んでいる。また、周辺地域に関するデータ収集もほぼ予定通り進行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、今年度は北海道の最終氷期最寒冷期(LGM)前後の石器群に関する補足的な調査をおこない、当該石器群についての分析作業を終了させるとともに、本州の石器群を対象とした分析を本格化させる予定である。本州では、周知の通り、細石刃石器群が出現する以前の段階から小形の石刃を剥離する技術が存在している。そうした小形石刃剥離技術と細石刃石器群との技術的・文化伝統的な関連に、これまで多くの注目が集められてきた。本研究では、フラクチャー・ウィングの分析に基づいた剥離方法の同定という観点から、本州の石刃や細石刃の剥離技術に押圧剥離法がいつ頃、どのような経緯で導入されたのかを明らかにしていきたい。こうした検討は、本州の細石刃石器群が周辺地域との関係でどのように出現したのかを解明することにもつながることになろう。 中国と韓国については、年代や石器群の内容についても含めた関連資料の集成を終了させている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日程調整の関係から国外での資料調査を実施できなかったので、それを次年度実施することとなった。 次年度は物品費の他に国外資料調査のために旅費を使用する計画である。
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Research Products
(4 results)