2015 Fiscal Year Research-status Report
石器使用痕の判定グローバル基準と比較文化的な機能形態学の構築
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25370885
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿子島 香 東北大学, 文学研究科, 教授 (10142902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿又 喜隆 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60343026)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 使用痕分析 / 微小剥離痕分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
石器の機能を実証的に推定していくための使用痕分析法について、より確度の高い判定基準を構築するための基準資料の整理と分析を、前年度までに引き続き着実に進めることができた。この作業は、グローバルな使用法推定基準を国際的に形成していくための基盤的な重要な段階である。東北大学使用痕研究チームとして、研究代表者を中心に1980年代から蓄積してきたデータベースを改めて見直し、比較文化的な基準としても有効性をもつ標準使用痕パターンの整理をすすめたのである。石器刃部の微小剥離痕画像について、ファイルとして長年利用してきた写真をデジタルデータ化し、スキャンした画像を石器使用実験の諸条件によって整理し、基準的チャートとして広く公開提示する作業を進めた。実験資料を、加工対象物の硬さ(軟、中、硬)、種類(植物、皮革、木材、骨角等)、作業の種類と条件(刃部の縦横方向、具体的用途、作業時の状況等)などの組合せで整理し、着目する微小剥離痕の属性項目と共に顕微鏡写真画像を公開した。東北大学総合学術博物館の紀要に、全文英文版で掲載し、近くネット公表の運びである。国際会議等で使用痕分析研究者との情報交換・討論を逐次すすめているが、地域による石器石材の相違、旧石器・新石器時代の環境的差異の枠組み設定などが、国際標準使用痕判定基準の問題点として、具体化している。日本列島と韓国との石材差異などの事例であるが、国際交流を通年で着実に進めることができた。使用痕分析の前提として、石器刃部の表面変化状況と文化層の堆積過程の検討が不可欠であるが、この面に重点をおいて山形県新庄市白山B遺跡の調査を行ない、ナイフ形石器文化層を検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石器使用痕の基準資料のデータベース化と国際標準へ向けての基準公開は、微小剥離痕分析を中心に進めてきた。観察の基準として微小剥離痕の諸属性を記載し、デジタル化した画像を選択して、実験使用痕の条件設定により分類し、公表した。グローバル基準の形成に向けて、石材との関連が課題となっている。また従来、調整加工としての微小剥離痕すなわち二次加工による剥離痕と、使用による微小剥離痕との区別が課題であったが、一定の理解が得られてきた。高倍率の金属顕微鏡による摩耗光沢と線状痕の観察は重要な分野であり、東北大学チームの分類が全国的に基準とされてきたが、標準資料の画像デジタル化と分類再検討をすすめ、公表準備中である。また石器表面の状況による使用痕分析の限定に関して、文化層の形成過程を重視した調査を進め、山形県新庄市白山B遺跡で発掘を実施した。高精度の年代測定資料を確保し、昨年度に調査した白山E遺跡資料と合わせて、ナイフ形石器文化期の良好な年代値が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
石器使用痕の各カテゴリーを総合的に評価していく必要があることから、微小剥離痕に加えて、摩耗光沢、線状痕、また比較的マクロな痕跡である衝撃剥離等までを関連させて基準化していくことが課題である。当チームで蓄積してきた摩耗光沢の分類と判定法を整理し、標準画像チャートとして英文解説により公表したい。国際学会、研究所訪問の機会により、東北大学チームの成果まとめを提示し、欧米の使用痕分析との対比を進めていくことが目標とされる。グローバル基準の構築のためには、各国での石器石材の多様性と、これまでの研究史での重点分野を相互に理解することが不可欠であり、そのためにも資料の実地観察を含めての国際学術交流を推進する。韓国、中国の旧石器研究者との相互資料検討を推進する。
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Causes of Carryover |
ヨーロッパ、とくにフランスでのフリント製石器の使用痕との比較のため、CNRSの考古学民族学研究所等において共同研究を実施する予定であった。しかし、前年度に来日した専門家の来訪成果の検討に時間を要した。また当研究科建物の耐震改修工事に対応した研究室一時移転の長期化と狭隘状況もあって、当初の予定購入設備の整備(システム金属顕微鏡)が遅延したが今年度に整備した。同設備を使用した国際共同研究計画(顕微鏡を海外へ持参しての使用痕標準パターンの検討を含む)を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題の最終年度にあたり、これまでの石器使用痕データの標準化基準をまとめる中に、海外の専門家との学術交流による検討、および東北日本と異なる海外の石器石材における使用痕分析の検討を含めて、全体の研究まとめを進める。
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Research Products
(4 results)