2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370899
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 修 筑波大学, 人文社会系, 助教 (20647060)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 西アジア / 考古学 / 石器 / 加熱処理 / 黒曜石 / 使用痕 / 技術 / トルコ:フランス:カナダ:イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究年度2年目の今年度は、当初の研究計画の予定通り、石器の加熱処理実験を中心に研究を進めた。本研究課題の3つの柱としている、石材の産地同定分析、加熱処理実験、使用痕分析のなかの1つにあたる。 前年度に実施した予備実験の結果を踏まえ、年度当初に加熱用の電気実験炉を購入し、それを用いてトルコ共和国で採取したフリント石材の加熱実験をおこなった。加熱温度、加熱時間の設定を変えながら実験を繰り返し、遺跡から出土する先史時代の石器と同様の加熱変化を引き起こす条件としては、250から350℃で2時間以上の加熱が必要であることを明らかにした。さらに、先史時代と同様の条件で石材を加熱するために、野外での焚き火によってフリントを加熱する実験をおこなった。熱電対温度計で加熱温度を計測し、やはり室内実験の結果と同様の加熱温度・時間が最適であることを確かめるとともに、野火の温度管理は予想以上に難しく、先史時代の石材加熱においても失敗例が多数あることを確認することができた。同時におこなった考古学資料の研究からは、当時の人々がこのような失敗を気にせずに加熱処理を実施していたことが予想され、先史時代の技術が不安定であった反面、技術の運用においては必ずしも効率化が求められていたわけではないことが明らかになった。石器利用の側面から当時の社会の性格を知る上での貴重な見解が得られたといえる。 また、加熱実験と併行し、8-9月にはトルコにおいてハッサンケイフ・ホユック遺跡の発掘調査(筑波大学アナトリア調査団)に参加し石器の基礎データを収集するとともに、昨年度に引き続き黒曜石の産地同定分析を継続しておこない、サラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡出土の黒曜石資料に関しては、全点の分析を終了することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおり、初年度と今年度において、石材の産地同定、加熱実験が順調に進んでいる。次年度に予定している石器の使用痕研究に関しても、研究協力者との研究打ち合わせ、研究資料の受け渡しはすでに済んでおり、準備は順調に進んでいるといえる。 また、今年度におこなった新たな発掘調査によって、さらに本研究で扱うことができる石器資料が増えており、次年度におこなう研究の資料も十分に確保できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度には、石器の使用痕研究を中心的におこなうとともに、これまでの研究成果を総括し、研究成果を発表することに重きを置く。黒曜石の産地同定分析に関してはすでに分析データが得られており、現在研究論文の発表について研究協力者と話を進めている段階である。次年度中には雑誌論文として研究成果を発表する予定である。また、今年度におこなった石材の加熱実験の補完研究として、遺跡から出土する石器を熱ルミネッセンス法などで分析し、先史時代の石材加熱温度にはかなり幅があったこと、加熱不足や過加熱の例が多数あったことを明らかにしたいと考えている。
|
Research Products
(4 results)