2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島における出現期の甑の故地に関する基礎的研究
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25370902
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Research Institution | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
Principal Investigator |
寺井 誠 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, 大阪歴史博物館, 主任学芸員 (60344371)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / 渡来人 / 甑 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の最終年度に当たる2015年度については、計画していた資料調査については予定通りに行うことができた。韓国での資料調査は京畿道・江原道・慶尚南道・全羅南道出土の甑やその共伴資料の調査を実施した。大阪など近畿地方での調査では、集落遺跡で出土する酸化焔焼成の甑の調査を進めるとともに、陶邑古窯址群出土の須恵器の甑との対比を進めた。さらに、福岡、佐賀、岡山など近畿以外の資料についても調査を進めて、近畿地方との対比を行った。 研究発表では、日本考古学協会総会にて「甑から見た渡来人の故地」を口頭発表し、本研究の骨子を示した。また、『大阪歴史博物館研究紀要』第14号にて「須恵器甑に見られる朝鮮半島系要素」を発表し、陶邑で作られる甑には土師器とは異なって6世紀になっても把手や蒸気孔の形態などに朝鮮半島的要素、特に百済的な要素が維持されていることから、継続的に朝鮮半島からの情報が入手されていた可能性があるとともに、一般的な集落遺跡で出土する土師器には見られない技法や蒸気孔が維持・採用されていることから、須恵器生産地の情報の閉鎖性についても指摘した。 研究の総まとめとして、年度末に成果報告書を刊行し、日韓の研究者に配布した。この報告書では、朝鮮半島の甑の形態的特徴や製作技法を整理し、朝鮮半島各地の原三国~三国時代の甑について集成的に整理したうえで、日本列島各地の甑の故地の傾向について検討した。その結果、全体的には全羅道(馬韓・百済)の甑に通じるものが圧倒的に多い一方で、文献などでは交流が多かったとされる慶尚南道東部(加耶)の甑は少ないことが分かった。また、近畿地方では全羅道系統の甑が多い一方で、岡山では全羅道系統の甑がなく、慶尚南道東部や慶尚北道(新羅・加耶)に通じる甑が複数個体あることは、地域によって朝鮮半島の交渉相手の傾向が異なる可能性があることを示した。
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