2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370903
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
木沢 直子 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (50270773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小村 眞理 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10261215)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東アジア / 櫛 / 副葬 / 葬制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代東アジアにおける櫛の系譜と用途を検証し、特に副葬品としての櫛に着目する。これにより葬送における櫛の副葬と着装について検証し、葬制の理解を深化させることを目的としている。これまで東アジアをフィールドとした櫛の起源、系譜、用途についての体系的な研究は行なわれていない。平成26年度は韓国高興野幕古墳から出土した竪櫛と日本の出土事例との比較検討を行なった1)。野幕古墳から出土した竪櫛は他の副葬品からも倭との関係が見られる。竪櫛についても出土状況や櫛の製作技法からも日本で出土する櫛との共通性が見られた。製作地についてはさらに検討が必要である。また、韓国軍守里耕作遺跡から出土した「双歯櫛」“Double-sided comb”(両端に歯を有する形態の櫛)の調査を錦江文化財研究所で行なった。「双歯櫛」はローマ時代にはユーラシア西部に広く分布することが知られていおり、こうした種類の櫛が新疆地域、韓半島百済地域でも確認された。これにより古代東アジアの櫛の用途や形態の理解のためにはユーラシアを含む広範囲での検討が必要であることが分かる。この点について、平成26年度に参加した東アジア考古学会モンゴル大会(SEAA Sixth Worldwide Conference in Ulaanbaatar, Mongolia)において発表した。 また、櫛の素材に着目し、日本で櫛の用材として多用されるイスノキに着目し、文字資料と出土資料からの検討を行ない、これをまとめた2)。 1)木沢「韓国と日本で出土した「竪櫛」の比較検討」『高興 野幕古墳 発掘調査報告書』国立羅州文化財研究所、2014.11. 2)木沢「奈良時代における木材の調達と加工-遺跡出土イスノキ材と正倉院文書にみられる「由志木」-」『古代学』第7号、奈良女子大学古代学学術研究センター、2015.3.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していたアスターナ古墳群出土資料(大英博物館所蔵)についてはすでに前年度に調査を実施していた。今年度はその調査結果を受け、前述の東アジア考古学会モンゴル大会に参加し、成果の一部を発表するとともに、関連資料について情報交換を行なった。また、紡織具とされる新疆于田県吾于来克遺跡出土「木手」(新疆ウイグル自治区博物館所蔵)についても、大英博物館のスタインコレクションのなかに類例を確認することができ、これを実見した。 海外での資料調査については、平成26年度は韓国およびモンゴルでの調査を実施した。モンゴルでは、匈奴関係資料のなかに中国漢代の特徴を持つ事例を確認することができた。櫛は携帯性の高い道具であり、漢の対匈奴の動きの際に、人の移動に伴って移動した可能性がある。古代東アジアにおける櫛についてユーラシアを含む広範囲での検討が必要であると考える本研究の課題を裏付ける事例でもあり大きな成果を得ることが出来た。 吐魯番出土文書については『随葬衣物疏』に見られる「梳」について記載事例を収集した。また、これと関連して正倉院文書に残る櫛およびその素材に関する記述の収集と内容の検討を行ない、これをまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
古代東アジアの櫛について、ユーラシアを含む広範囲にわたる地域での検討を可能とするため、引き続き中国と韓国における調査を行ない、その必要性を発信する予定である。 中国については新疆地域についてすでに新疆考古学研究所の情報を提供していただいており、引き続きさらに資料を収集する予定である。韓国については国立扶余博物館で、百済時代の「双歯櫛」を実見する。国立全州博物館では竹幕洞祭祀遺跡出土石製模造品の調査を行ない、櫛と祭祀遺構について検討を行なう予定である。 また、櫛に関連する記述がみられる文字資料と、素材(特に木材)についても調査を行なう。これまでの調査の成果として、8月に予定されている「2015東アジア文化遺産保存国際シンポジウムin奈良」に参加し、国立羅州文化財研究所と鄭巨欣氏(中国美術学院)との共同発表を行なう予定である(仮題「アジアにおける櫛の系譜―中国・韓半島・日本を結ぶ形態と製作技術―」)。 櫛の素材については、日本で櫛の用材として多用されるイスノキの検討に続く課題として、同じく櫛の材として記述がある「赤木」の実態についても調査を行なう。本課題の最終年度であるため、これまでの成果をまとめて論文発表を行なう予定である。
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Causes of Carryover |
備品購入に伴い生じた差額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品購入に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)