2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370915
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鹿嶋 洋 熊本大学, 文学部, 教授 (50283510)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 工場閉鎖 / 労働者 / 地域経済 / 産業構造 / 立地再編 |
Research Abstract |
本年度は,工場閉鎖の地域的影響を解明する端緒として,閉鎖工場の労働者の動向を分析し,論文にまとめた.対象地域は,ごく最近に主力工場の閉鎖が相次ぎ,約千人の雇用が失われた鹿児島県出水市である.本研究ではNEC鹿児島従業員の閉鎖後の動向を,出水公共職業安定所の資料によって把握するとともに,同工場閉鎖時の経営幹部,元従業員などへの聞き取り調査を行った.結果の概要は以下の通りである. 第1に,NECは,液晶生産を新しい生産設備を持つ秋田工場に集約するため,鹿児島工場を閉鎖した.第2に,従業員は秋田への配置転換か希望退職かの選択を迫られた結果,9割以上の従業員が希望退職を選択した.第3に,離職者のうち約3分の2は再就職した.個々の従業員が,自らのキャリアや家族の事情を斟酌して,再就職に当たり何を優先したかによって,再就職先の地域や業種が異なっていた.第4に,域外への流出は配置転換と再就職を含めて約3割にとどまっており,地元に一定の雇用吸収力があった.大企業の人材を獲得して事業拡大を図ろうとする地元企業の存在,産業構造の変化と関連した非製造業への労働者の移動,高い給与水準による財産形成や公的扶助等の制度などが相まって,大量の失業者を生み出す状況には至らなかった.第5に,主力工場の閉鎖は新規学卒者,とくに技術系人材の地元での就職を困難にし,若者の流出が懸念される.第6に,離職者へのインタビューによれば,再就職に当たり,家族の事情から地元で仕事を求めたこと,妻や子どもの収入が家計を補助したこと,親戚や知人からの仕事の紹介や情報提供などの支援,公的な支援など,離職者を取り囲む様々な資源の活用が重要であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予備調査を予定していたが,予想以上に対象地域での調査協力が得られ,多くの情報を得ることができた.それによって,実態調査に基づく研究論文を執筆することができた.また,実態調査を通じて,情報源の所在等をつかむことができたので,今後の調査を寄り効率的に行うことが可能と考えている.これらの点は当初の予定以上の成果である. 他方で,隣接諸学の検討についてはやや出遅れた感がある.これらを総合し,概ね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き既存研究の検討を進め,分析枠組みを精緻化に取り組む. 現在調査を行っている対象地域に加えて,地域的条件の異なる別の対象地域の選定を行って予備調査を実施し,地域間比較に取り組む.
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Research Products
(3 results)