2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後の山村における電力空白地域の配電過程に関する地理学的研究
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25370917
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
西野 寿章 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40208202)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 山村 / 戦後 / 電化 / 住民参加 / 小水力発電 / 農業協同組合 / 電気組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後の山村電化プロセスについて、本年度は広島県、島根県、愛知県、福井県および北海道等で資料調査を実施した。昭和27年の農山漁村電気導入促進法に則して山村電化が進んだが、発電所建設や配線にかかる費用の2割は自己資金として用意する必要があり、資料調査は、電化事業全般に渡るが、とりわけ住民の参加(出資)状況を重点的に調査した。その結果、広島県ではいくつかの電化農協の関係書類から住民が自己資金分に相当する額を負担したことが判明し、島根県では1つの電化農協についてのみ、その事実が判明した。また愛知県や福井県においても、戦後の山村電化に関連した資料収集を行ったものの、住民出資に関する資料は入手できなかった。 研究2年目の今年度の大きな研究成果は、昭和49年まで自治体が電気事業に関わっていたということが分かったことである。具体的には、北海道雄武町と枝幸町の共同による電気組合が昭和49年まで経営されていたことを北海道公文書館の資料調査で把握した。これまでの認識は、自治体による電気事業は昭和18年の電力統制で消滅し、戦後は電化農協が地域電化を担い、自治体は関わりを持っていなかったということであった。しかし、雄武枝幸町電気組合は、当初は単独で行うものの、昭和36年以降は一部事務組合事業として取り組んでいた。この組合経営に関する資料が雄武町役場に保存されており、昭和30年当時の住民出資に関する資料をはじめとした資料調査を行うことができたが、最終年度においてさらに調査を重ねることとした。 なお、戦後の電化農協関係のモデルは、米国の電化農協組合だと推測しているが、その確証を得るには至っていない。最終年度において、その確証を得るための調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦後、電化農協方式による山村電化が集中的に見られた広島県、島根県、鳥取県の資料調査はほぼ終えることができた。ただし、戦後山村電化の核心部分である住民参加(出資)に関する資料は十分に得られたわけではなく、なおも地域に保存されている可能性を求めて調査を続ける必要がある。また、北海道において、高度経済成長期を経ても、まだ自治体が電気供給に関わっていた事実は、本研究をより一層充実したものとしてくれている。なお、戦後山村の電化方式のモデルとなったと推測される米国関係の資料の収集は、ニューディール政策下において進んだことが判る資料は相当量収集できたが、日本へ伝播した可能性を探れる資料の存在が年度末になって判明し、最終年度に持ち越した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる平成27年度は、本研究のまとめを念頭に、依然として不足している資料の収集と分析にあたりたい。広島県をはじめとした中国地方の小水力発電導入過程における住民参加(出資)の様子はいくつかの地域で得られており、最終年度は現地に出かけての聞き取り調査を行って、資料だけでは判明していない部分について補いたい。また昨秋、新たに判明した北海道雄武枝幸町電気組合については、さらに資料収集と当時の職員等への聞き取り調査を進めて、高度経済成長期を経てもなおも自治体が電気事業を担わなければならなかった背景を明らかにした。そして、戦後山村電化のモデルになったと推測される米国農村電化関係資料が得られる可能性の高いことが年度末に判明したことから、その収集にも努め、本研究のテーマである戦後山村における配電プロセスを明らかにする。
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Causes of Carryover |
2年度目は、カリフォルニア州の山村にある米国電化農業協同組合の現地ヒアリングを予定していたが、訪問先に到達する公共交通がないことが判り、米国在住の知人にドライバーの手配をお願いしたものの、謝金額等の条件に合致した人を見つけることができなかったことから2年度目の渡米は断念した。なお、最終年度において、米国農村電化に関する資料を収集しつつ、現地調査の可能性を探りたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、国内では広島県、北海道で重点的に資料調査と現地調査を進める一方、米国農村電化協同組合の調査を実現させたい。また研究成果を公表するための個人のホームページの立ち上げを秋以降に行い、順次、本科研以外の成果も含め、研究結果を公表していくこととする。
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