2013 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会が直面する郊外住宅地の選別化に関する研究
Project/Area Number |
25370920
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
佐藤 英人 帝京大学, 経済学部, 准教授 (00396798)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 郊外住宅地 / 不動産競売 / 東京大都市圏 / 選別化 |
Research Abstract |
平成25年度は、3つの作業を実施した。第1は、国内外の都市地理学ならびに経済地理学の文献研究を通じて、本研究の理論的な位置づけを行った。とりわけ本研究の主要課題である少子高齢化に伴う郊外住宅地の選別化など、昨今の住宅・都市問題について整理した。第2は、競売物件情報のデータベースを構築した。本研究で用いる不動産競売情報は、全国の裁判所で公示されており、競売物件の詳細情報(所在地、売却価格、土地・家屋面積、築年数等)が把握できる。分析対象地域を東京大都市圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)とし、さいたま地方裁判所本庁・各支部、千葉地方裁判所本庁・各支部、東京地方裁判所本庁・各支部、横浜地方裁判所本庁・各支部管内における2011年度の不動産競売情報を集計した。第3は、構築したデータベースをGISで可視化し、競売物件の地理的特性を解析した。戸建住宅の競売物件は東京大都市圏郊外の中でも特に千葉県に多く分布している。分布の濃淡をより明確にするために、3次メッシュを用いて世帯数に対する戸建住宅の競売物件数の割合(各メッシュごとの競売率)を集計すると、千葉県東金市や茂原市、旧大網白里町など、都心50Km以遠の外部郊外(Outer Suburb)に集中していることがわかる。これらの地域は、バブル経済期前後に土地建物の販売を開始した住宅地と符合する。 地価の急激な上昇に伴い、住宅の供給ポテンシャルが都心から郊外へと大きく移動し、人口の郊外化が顕著にみられた当時、千葉県内を中心とした外部郊外の住宅地では少しでも安価な戸建持家住宅を求めて、身の丈に合わない住宅ローンが設定されて、取得に至った世帯が少なくないと推測される。 なお、本研究の概要は2013年人文地理学会大会(佐藤英人(帝京大)・中澤高志(明治大):不動産競売からみた郊外住宅地の新たな問題―東京大都市圏を事例として―)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、データベースの構築とGISによる可視化作業が難航すると思われたが、作業工程を細分化したり、中澤高志教授(明治大)をはじめとする専門家から適切な助言を乞うことにより、本研究は計画以上に進展した。とくに、競売物件の分布(戸建住宅)が、東京大都市圏東郊に偏在する傾向を明示できたことは大きな成果であり、研究2年目に実施する現地調査の選定に大きく寄与する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、研究初年度で構築したデータベースとGISによる分析結果を基に、一般住宅が不動産競売として処理される傾向の強い地域を選定し、現地調査を実施する。現地調査に先立ち、競売物件の登記状況を確認する。競売物件の登記情報は「登記情報提供サービス」(http://www1.touki.or.jp/gateway.html)より取得し、不動産登記の異動、担保権の設定状況などを確認して、いつ、だれが、どのようにして一般住宅を競売処理したのか、不動産競売の構造を分析する。 つぎに、これまで得られた机上の知見に、誤謬や齟齬が無いかを確認するため、研究対象地域で事業を展開している地元不動産業者や関係自治体に聞き取り調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年3月27日~28日に開催された日本地理学会春期学術大会(国士舘大学世田谷キャンパス)での発表を予定していたが、研究代表者本人の異動(帝京大学経済学部より高崎経済大学地域政策学部へ)が急遽決まり、やむを得ず発表を見送ったため。 当初予定していた学会発表を次年度に行うので、その際の旅費として使用する。
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