2015 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会が直面する郊外住宅地の選別化に関する研究
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25370920
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
佐藤 英人 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (00396798)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不動産競売 / 郊外住宅地 / 東京大都市圏 / 中古住宅 / 空家 / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は郊外住宅地の選別化を不動産競売の視点のみならず,中古住宅の流通量の視点から分析した。日本の中古住宅流通量は1990~2010年の20年間,ほぼ横ばいで推移している。新規着工戸数を含む住宅流通量全体に対する中古住宅の割合は拡大しているが,これは新規着工戸数の大幅な減少によるものであり,中古住宅の流通量が増加した結果ではない。日本最大の住宅市場を擁する東京大都市圏でも,中古住宅の売却希望件数は年を追うごとに増加している。ただし,実際に売買契約が成立する件数は低水準にとどまっており,供給過剰な様相を呈している。中でも,都心40km以遠の郊外住宅地と最寄駅非徒歩圏の住宅地では売買契約が成立し難い。 本研究ではGoogle Geocoding APIを用いて,新築住宅取得者と中古住宅取得者における前住地/現住地-最寄駅間の最短距離を計測した後,住宅取得前後の徒歩圏率(徒歩5分(400m)圏と同10分(800m)圏に位置する割合)を集計し,最寄駅までの近接性を評価した。 分析の結果,最寄駅近傍に中古住宅が供給されるほど,利便性の高い地区での住宅取得機会は広がるが,最寄駅から非徒歩圏に位置する利便性の低い地区では,新築/中古の別を問わず,比較的早い段階に住み手を失い,空家や空室が増加することが明らかになった。すでに議論の俎上に載せられている住宅地の選別・淘汰やシュリンキング・シティ論を精緻化する際,新築住宅のみならず中古住宅の動向にも注視する必要があろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
郊外住宅地の選別化を不動産競売のみならず,中古住宅の需給関係から分析するという新しい試みに着手できたため。当初予定していた研究成果よりも,さらなる上積みが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見に,誤謬や齟齬がないかを確認するため,研究対象地域に該当する自治体等に聞き取り調査を実施する。来年度は研究期間延長後の研究最終年度にあたるため,成果の取りまとめが主な作業となる。
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Causes of Carryover |
研究最終年度の延長を申請し,当該年度に実施する予定であった聞き取り調査と研究成果の公表(学会発表および報告書のとりまとめ)を次年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に実施する予定であった聞き取り調査と研究成果の公表(学会発表および報告書のとりまとめ)に使用する。
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