2015 Fiscal Year Research-status Report
アジア新興国の大都市郊外における変貌と再編に関する地域的研究
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25370923
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
季 増民 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (20278237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域再編 / 郊外地域 / 都市化の進展 / アジア新興国 / 国際貢献 / 学際貢献 / 持続可能 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国の沿海地方都市K市を事例に、郊外地域への農民工生活圏の偏在、中心市街地と郊外におけるいわゆる「住み分け」の実態を、詳細なデータに基づき明らかにする。次に「農民工の生活圏の分化」では、農民工の生活空間(地域性)と年齢、職業、学歴、出身地などの属性とを密接に関連づけて、「人と場」との相関性から分析する。さらに農民工の集中によって郊外地域に投影された多様な土地利用の混在や異質な住民の混住の特徴について、現地調査を踏まえ、その実態を明らかにする。最後、農民工属性と生活圏構成との関連性を考察している(研究成果は、雑誌論文1を参照されたい)。 同じく沿海地方都市であるK市を事例に、「住み分け」から「住み替え」を経て、移住先の地域社会へと融合していく農民工の定住プロセスの空間的軌跡とそのメカニズムを複眼的に解明した。具体的には、①3つの農民工学校で実施したアンケート調査結果を踏まえながら、農民工生活圏の特徴と学校別の違いについて分析する。②農民工居住地の空間的特徴を多角的に探るため、ポイント保有状況という視点から、農民工の属性に基づく住み分けを考察する。③統計データー・アンケート調査結果・ポイント保有状況を相関させながら、移住先での日常生活のなかで生まれたつながり、新たな生活圏とそれぞれの特徴を析出する。④地域の視点に立ち、地域の問題としての農民工生活圏の存立基盤を分析する。最後に地域づくりへの農民工の参加、農民工利益への配慮の必要性について提言し、今後の研究課題について言及する(研究成果は、雑誌論文2を参照されたい)。 研究成果の公表は、計画通り、雑誌論文のほか、学会発表を行った(学会発表を参照されたい)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度では、計画書に従って、市域全体から街道(鎮)、社区(村)、農民住宅に至るまで、各地域単位における農民工生活圏の形成について、マルチスケールの視点から立体的、多層的に解明した。特に、農民工が日常的に暮らす社区という、実質的な生活空間に焦点を当て、詳細な考察を実施した。市域から農家に至るまで各空間レベル、いわゆる縦型の分析と、社区という平面的な空間に展開される農民工の生活圏、いわゆる横型の考察、この両者をクロスしながら一体的な分析を行おうと試みた。 また、農民工生活圏の形成のメカニズム、郊外と市街地での「住み分け」の原因、生活自立に向けての農民工の居住地選択の背景について、農民工の属性、生活を営む場所の地域性(人と場)、さらには受け入れ先自治体による農民工受け入れ政策の変化を密接に結びつけながら分析してきた。 詳細な資料に基づく分析の結果、年齢(ジェネレーション)、性別、職業(収入)、学歴(職種)、出身地(地縁・業縁)などの属性と、移住先における農民工の生活空間(居住場所、住宅の種類、通勤圏、通学圏、購買圏、交際圏)の形成とは切り離しがたく深く関わり合っていることが明らかになった。両者には一体不可分の関係にある。 大きくは7~8割の農民工が暮らす郊外集中型生活圏(ゾーン)と1~2割の農民工エリートから構成される市街地分散型生活圏に分かれる。後者は郊外型と比べれば相対的に若い年齢、高学歴、知的職業、高収入、良質住宅、家族単位での安定的な居住、移住先への強い帰属意識、市民権取得条件の保有をその特徴とする。
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Strategy for Future Research Activity |
衛星画像の解析結果に行政境界を重ね、自治体(郊外全域、鎮、村)の統計データとの一致を図り、調査対象地域のGISデータを整備する。土地利用や地域社会の実態を重層的に把握するため、マルチスケールでの検討を行う。統計データまたは質問票調査に基づき、鎮、村単位における年齢・性別・婚姻・学歴といった基本属性、居住状況・職業・在住期間といった社会・経済属性の変化について5年ごと分析する。データセットに連動して意向調査を5年ごと実施し、その結果を郊外地域における空間構造や社会構成の解明と将来の予測に活用する。この研究は都市、農村を含む「地域」研究という地理学独自の視野・研究方法を適用する。 具体的には、①自己形成、学歴取得、就職、生得的家族から獲得的家族へ、子育て、老後といった、住民のライフコースのそれぞれの分岐点を繋ぐ人生軌跡に、空間変遷軌跡(住宅利用と変動)を重ねてクロス集計を行う。②その結果にさらに、新住民の故郷離脱プロセス(故郷にある土地請負権利の賃貸・譲渡、故郷在住の子供・両親・兄弟を移転先に呼び寄せる、故郷の不動産及び家財道具の処分、戸籍の移動など)を加える。③このような分析プロセスを経れば、地方農民から郊外という過渡地域を経て都市生活者へと変質していく過程を時空間的に際だたせることができる。④また各人が歩むライフコースと、それを規定する(影響を与える)要因との関係、その投影としての空間軌跡(住宅利用と変動)も解明することができる。
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Causes of Carryover |
予定していた一部の海外現地調査計画を、対象地域の都合により次年度実施するため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画にそって、国内と海外現地調査費、関連人件費・謝金の支出を予定している。
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