2013 Fiscal Year Research-status Report
戦時体制下の公的施策と民俗-経済更生・生活改善各運動の同時代的交差からの検討-
Project/Area Number |
25370934
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
和田 健 千葉大学, 国際教育センター, 准教授 (20292485)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農山漁村経済更生運動 / 生活改善運動 / 模範町村 / 生活改善同盟会 |
Research Abstract |
2013年度は、昭和9~10年度に新規指定を受けた茨城県更生指定村の更生計画書を中心に渉猟し、生活改善事項の記述および精神の作興などの記述を整理分析した。あわせてこの2年度内における指定村の中から生活改善同盟会が組織されていた更生指定村を探し出し、生活改善規約を掲載した指定村の更生計画書と、当該地域の民俗調査報告書および市町村史、郷土史関係の記述をもとに、経済更生運動による改善目標と生活改善同盟会の活動相互の関係性を分析した。 注目して検討したのは、更生指定村としてどのように改善の徹底を図ったかという点である。大きく2つの方法があげられる。ひとつは印刷物による生活改善事項の徹底共有である。例えば「計画実行案を印刷に付し毎戸配布し実行案を徹底せしめ」(黒澤村更生計画書)や「右の実行事項は印刷に附し置き各個人は所用枚数を委員より交付を受け親戚等に配布し置くこと」(下大野村更生計画書)、そして戸主に更生計画の実行を書面で取り交わす誓約書を書かせる(十和村更生計画書)など、改善事項を文字により可視化し署名により努力目標から徹底的確守を求めるものとしたところである。 もうひとつは、定期的な会合を持つことにある。「十九夜講を利用して講演講話会をなす」(斗利出村更生計画書)「各部落に懇談会」(黒澤村更生計画書)「毎年1回精神修養講習会、映画会、農事座談会等を開催し経済更生の趣旨を徹底せしむること」(小里村更生計画書)といった、会合をいかに増やし活用するかの記述が各更生計画書に多く見られる。先に述べた下大野村における「子安講の再興」なども女性が定期的に集まる場を設けようとするものであろうと思われる。 上記に示した茨城県更生計画書の渉猟とその分析とは別に、生活改善同盟会が刊行物である『生活改善の栞』『農村生活改善指針』における社交儀礼に関わる記述と生活改善規約の関わりについて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昭和11,12年度の茨城県更生計画書の分析を行うには至らなかったが、おおむね新規更生指定村の計画書について記述の実相を捉えることができたといえる。 また生活改善同盟会の刊行物に関しては、刊行物の執筆者の実相を詳細に点検することはできなかったが、刊行の趣旨や目的の下に経済更生運動に与えた影響を読み取るきっかけをつかむところまで把握できたと考えているが、さらに詳細に見ていくことが2014年度の重要課題でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、更生計画書の渉猟が中心であったが、その作業は引き続いて行うものとして、2014年度は生活改善中央会から公刊された機関誌『生活改善』の分析を中心にすすめていきたい。 『生活改善』には、経済更生運動での生活習俗への言及と重複する点はあるが、むら内で規約を作ることや社交儀礼、栄養指導、衛生改善含めて、より多岐にわたる具体的な生活改善指針を出している。しかし管見のところ『生活改善』の記述をもとにした世相的分析および経済更生運動のような他の官製運動との関わりについて具体的な民俗誌的資料を基に分析している研究成果例はない。そこでまず官製運動におけるメディアの役割を見るため、農村更生協会の出した機関誌『村』そして生活改善同盟会の出した『生活改善』双方の機関誌の分析を通じて、戦時体制下における生活習俗の創造を考察したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料調査(日帰り交通費による)の計画を立てていたが1日分、本務の事情で年度末までに出向くことができなかったため、交通費分が残金として生じた。 年度明けにすぐ資料調査の用件で出向き、執行をする予定である。
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