2015 Fiscal Year Annual Research Report
先住民文化の普及と保護に果たす映像メディアの役割に関する応用映像人類学的研究
Project/Area Number |
25370938
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
分藤 大翼 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (70397579)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | カメルーン共和国 / 先住民文化の保護 / 参加型映像制作 / 応用映像人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に実施した主な研究は、平成26年度に実施したカメルーン共和国における現地調査のデータ分析であった。前年度までに制作した映像作品等を現地で上映し、数多くの先住民や先住民組織のスタッフ、研究者とともに議論し録音データを収集した。本研究を通じて明らかになったことは、上映会を開催することによって、多くの人々が一堂に会し、映像を視聴することで、普段は口にしないような意見を述べるということであった。特に先住民組織のスタッフは上映会における討論に強い手ごたえを感じており、今後も継続することで先住民文化の普及と保護が進むとの見解を述べた。また、先住民の窮状を訴える内容や先住民組織の活動を紹介する作品よりも、先住民の伝統的な生活文化を描いた作品の方が、総じて観衆の反応が良く、その後の話し合いも活発になるという現象が見られた。この結果からは、今後に制作する映像作品は、先住民文化における伝統的な部分を大切にしつつ、人々が楽しんで視聴できるような内容のものにする必要があるということが分かった。それは、記録映画であるよりは、むしろ劇映画のスタイルで制作された作品の方が、先住民文化の普及と保護に資するものになる可能性があることを示唆している。これは、応用映像人類学という本研究分野において新しい展開となるだろう。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、平成26年度における国際学会や国際映画祭における発表、ならびに共編著である『フィールド映像術』(古今書院)の出版が際立っている。『フィールド映像術』に掲載された拙稿は、「参加型映像制作」の実践例として応用映像人類学の国際的な動向と呼応しながら、独自の取り組みを広く一般にも報告するものとなっており、映像メディアを活用した先住民運動の一つのモデルを提示するものとなっている。
|