2013 Fiscal Year Research-status Report
現代アートを用いての先史文化理解と先史文化を用いての現代アート制作の人類学的研究
Project/Area Number |
25370944
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古谷 嘉章 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (50183934)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 先史文化 / 縄文文化 / 現代アート / 博物館展示 |
Research Abstract |
1.[2013.7.27―7.28]「縄文コンテンポラリー展 in 船橋2013」(千葉県船橋市飛ノ台史跡公園博物館)の展示および「タイスペシャルデー」および「縄文アートまつり」のワークショップ、パネルトーク、アーティストトークを調査した。 2.[2013.10.8―10.9]「うつす・つくる・のこす:日本近代における考古資料の記録」展(東京国立博物館)調査を行い、担当学芸員ならびに土器修復専門家と意見交換を行った。 3.[2013.10.30-11.3] 府中工房(東京)において土器修復家兼アーティストに縄文研究と現代アートの連携関係について聞き取り調査を行い、十日町市博物館(新潟県十日町市)、農と縄文の体験学習館なじょもん(新潟県津南町)、同町の沖ノ原遺跡および歴史民俗資料館、新潟県立歴史博物館(新潟県長岡市)、馬高遺跡および馬高縄文館(長岡市)において展示および活動について詳細な聞き取り調査を行い、信濃川流域の火炎型土器を特徴とする縄文文化の保存および展示の実情と、それと現代アート展示の連携の実情および問題点について、詳細かつ具体的なデータを収集することができた。 4.[2014.3.8―3.11]茅野市立尖石考古館における館長講演「茅野市の縄文遺産を未来に伝える」を聴講し、同館長にインタヴューを行った。同館において屋内外の展示について調査し、学芸員に博物館活動についての事情聴取を行った。茅野市民館・茅野市美術館において、活動について館長ならびに学芸員にインタヴューを行い、茅野市市役所において、同市で推進している「縄文プロジェクト」について資料収集を行った。茅野市内において、縄文関連商品を扱っている業者の調査を行った。以上のすべてにおいて、茅野市における縄文文化の「活用」の実態について詳細なデータを得られ、本研究にとって不可欠の知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、先史文化の研究と現代アートの制作の間で近年顕著になりつつある相互乗り入れ的な関係の深まり、具体的には「現代アートを用いての先史文化理解」と「先史文化を用いての現代アート制作」が、どのように影響を与え合いつつ連動し、どのような効果を生み出しているのかについて縄文文化をめぐる事例を中心に詳細に明らかにすることを目的とするものである。 平成25年度においては、国内3か所の博物館における展示および活動を中心に実態調査を行うことを予定していた。その3か所すなわち「船橋市飛ノ台史跡公園博物館」(千葉県船橋市)、「農と縄文の体験学習館なじょもん」(新潟県津南町)、「尖石縄文考古館」(長野県茅野市)において実態について詳細な調査を行ったほか、それぞれの地域および近隣地方の他の文化施設「十日町市博物館」(新潟県十日町市)、「沖ノ原遺跡および歴史民俗資料館」(津南町)、「新潟県立歴史博物館」および「馬高遺跡および馬高縄文館」(新潟県長岡市)、「茅野市民館および茅野市美術館」(長野県茅野市)においても実態調査を行い、各地域の縄文文化の位置づけと現代アートとの関係について詳細かつ具体的に明らかにすることができた。 同時に、東京国立博物館において開催された、日本近代における考古学とアートの関係についての展覧会を調査し、担当学芸員等とディスカッションを行うことを通じて視野を拡大し、本研究の知見を時期的に拡大することができた。 他方、土器修復専門家を含めて、縄文にインスピレーションを得たアート作品を制作し展示しているアーティストたちを対象とするインタヴューを通じて、現代アートの側から見ての縄文(文化・遺物)の意味づけ、およびそれと考古学者の学術的知見との重なりと齟齬を明らかにすることができた。 以上の理由から、実態調査において予定を大きく上回る成果を上げつつあると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、平成26年度においては、当初の計画通り、先史文化と現代アートのインターラクションについて全般的な文献研究を継続すると同時に、つぎのような実態調査を行う。 (1)船橋市飛ノ台史跡公園博物館における「縄文コンテンポラリーアート展」を継続して調査し、現在進行中の展示方針の大きな変革を明らかにする。(2)「縄文の丘三内まほろばパーク」および「青森県立美術館」において実態調査を行い、青森県における縄文文化と現代アートの関係について、展示をはじめとする文化施設の活動および地域全体としての縄文関係の取組について具体的に明らかにする。(3)「御所野縄文公園・博物館」および「滝沢村埋蔵文化センター」において実態調査を行い、岩手県における縄文文化と現代アートの関係について、展示をはじめとする文化施設の活動および地域全体としての縄文関係の取組について具体的に明らかにする。(4)「セインズベリー視覚芸術センター」(ノリッチ)および「大英博物館」(ロンドン)において実態調査をおこない、連合王国における、先史文化と現代アートの関係に関して、日本社会における縄文文化の事例との類似と相違に注目して調査する。 以上の実態調査に加えて、平成26年度においても、アーティストの創作活動の調査を行い、現代アートのアーティストの創作活動にとって先史文化がどのような意味をもつものなのか概況を把握する。 また平成26年度においては、国際学会において本研究の中間発表を行う予定である。 平成27年度以降については、飛ノ台史跡公園博物館において定点観測を継続するほか、既に実態調査を行った国内各地の活動について詳細に明らかにすると同時に、日本および連合王国の実情との比較を目的として、ブラジルにおいて先史文化と現代アートの関係についての実態調査を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
船橋市飛ノ台史跡公園博物館において実施した2回の実態調査のうち1回については、同一の出張期間において他の用務との重複が生じたため、本助成金からの出費を行わなかったことにより助成金の残額が発生した。 平成26年度の研究計画において、連合王国における実態調査に関しては、当初、期間を最小限度として申請しており、助成金を十分に活かして予定以上の成果を上げるために、期間を若干延長することが必要であると判断しており、平成25年度の残金はそれに充当する。
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