2015 Fiscal Year Research-status Report
現代アートを用いての先史文化理解と先史文化を用いての現代アート制作の人類学的研究
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25370944
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古谷 嘉章 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (50183934)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 先史文化 / 縄文文化 / 現代アート / 博物館展示 / 世界遺産 / 遺跡保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1).[2015.7.19]「縄文コンテンポラリー展in ふなばし 環:北海道・サハリン・カムチャッカ~北米へとつながる古代と現代」(千葉県船橋市飛ノ台史跡公園博物館)を、企画準備段階からフォローして北米先住民アーティストの多数の作品の展示を含む本年度の企画全般について把握するとともに、展覧会の展示等について、開幕時における在米キュレーターへのインタヴュー等、アーティストに対するインタヴュー等を通じて実態を調査した。 (2).[2015.8.30] 同展の一環として開催された「縄文アート展覧会」に参加し、縄文文化をめぐってアーティストと考古学者の観点の交錯について具体的な知見を得ることができた。さらに同展のカタログに展覧会のレヴュー「二次元の平面、三次元の物体、物質化されないイメージ」を日本語ならびに英語で掲載した。 (3).[2015.9.7-9.12] 岩手県(盛岡市、滝沢市、一戸町)および青森県八戸市における縄文文化の活用およびそれとアートとの関係についての実態調査を、①滝沢市埋蔵文化財センター「縄文ふれあい館」ならびに湯舟沢環状列石、②一戸町御所野縄文博物館ならびに御所野遺跡、③八戸市埋蔵文化財センター「是川縄文館」、④盛岡市「遺跡の学び館」において、学芸員へのインタヴューおよび展示の分析を中心として実施した。それを通じて、北海道・北東北の縄文遺跡群世界遺産登録推進活動の各地における展開について具体的かつ詳細な知見を得ることができたと同時に、縄文遺跡の保存展示活動を、地域の他の文化活動等とリンクしている実態の多様性について明らかにすることができた。 (4).年間を通じてマスメディア等で報道される関連事項についてフォローすることにより、縄文をめぐる各地の活動が、国宝指定、世界遺産登録推進、東京オリンピック開催準備など多様な現象と結びついて、いままで以上に活発化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、先史文化の研究と現代アートの制作のあいだで顕著になりつつある相互乗入れ的な関係の深まり、具体的には「現代アートを用いての先史文化理解」と「先史文化を利用しての現代アート制作」が、どのように影響を与え合い連動し、どのような効果を生み出しているのかについて縄文文化をめぐる事例を中心に明らかにすることを目的とするものである。 平成27年度に実態調査を予定していた博物館のうち、「船橋市飛ノ台史跡公園博物館」(千葉県船橋市)においては引き続き「縄文コンテンポラリー(アート)展」の定点観測を継続し、岩手県および青森県東部においては予定通り実態調査を行い、御所野縄文博物館長をはじめ、各施設において中心的役割を果たす専門職員に十分な時間をとってインタヴューを行うことができ、それぞれの保存や展示の特色、ならびに直面している問題点などについて詳細に知ることができた。以上のように国内においては、当初の計画以上に研究を進めることができた。他方、平成27年度に調査を予定していたブラジル連邦共和国における調査は、ブラジル国内の諸事情ならびに、部局長としての私の業務の繁忙性ゆえに、必要なだけの出張期間を確保することができなかったため、実施を延期せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) (1). 本研究は、平成25年度~28年度の4か年にわたるものとして計画されており、平成28年度は最終年度にあたるため、実態調査および文献研究を継続すると同時に、各地域の事例を比較総合して、現代社会における先史文化と現代アートの相互作用について、総括的な結論を得て、学術論文等のかたちで公表することを予定している。 (2). 実態調査としては、海外調査として、ブラジル連邦共和国の2地域(サンパウロ市とベレン市)において、先史文化と現代アートの関係についての調査を実施し、既に実施している日本国内および連合王国の事例との比較研究を行う。 (3). 国内における実態調査としては、すでに開催準備作業に入っている「第16回縄文コンテンポラリー展」(船橋市飛ノ台史跡公園博物館)について定点調査を継続すると同時に、本研究において既に実地調査を行った長野県茅野市と青森県青森市において、土偶の国宝指定や世界遺産登録推進活動などとの関連において時系列的な展開に焦点をしぼった追跡調査を行う。
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Causes of Carryover |
ブラジルにおいて平成27年度に実施予定だった本年度実態調査について、ジカ熱流行などのブラジル国内の事情と、私の本務校における部局長としての大学管理運営業務のゆえに、必要なだけの出張期間が確保できず、そのことが調査目的の十全な達成を困難にすることが予想されたため、調査の実施を延期せざるをえなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度にブラジルにおいて実施予定の実態調査の費用に充当する。平成28年度は部局長業務はないので、計画通りの調査の実施が可能である。また当初計画からの時期変更のため、物価が高騰するオリンピック開催年を回避することが不可能になり、その結果、経費の大幅な増加が予想されるため、確実な執行が見込まれる。
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