2015 Fiscal Year Research-status Report
家族史から接近するサラワク・イバン社会におけるモダニティの形成
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25370948
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
内堀 基光 放送大学, 教養学部, 教授 (30126726)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モダニティ / 家族史 / イバン人 / サラワク / 移動 / 小集団人口学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度より4年計画で行なわれている研究の第3年次に当る本年度は、現地調査としては過去2年度に引き続き、サラワク州イバン人のあいだで家族史資料を収集を行なった。現地の研究協力者であるチャイ博士(サラワクマレーシア大学上級講師)とともに、現地華人とイバン人の社会交渉の実態を調査に組入れた。今年次の現地調査では8月27日から9月19日までの出張期間中、サラワク州中部のシブ市およびカピット市、南部のサラトック市近郊のイバン人集落(ロングハウスと個別住宅)で行なった。今回は家族史の完全記録の一段階として、親族および友人関係を含む係累の広がり、州南部地域の各地における教育状況を探ることを中心に調査した。とりわけカピット市内では、内堀が1975年以来継続的にコンタクトしている集落(ロングハウス)出身で、大学教育を受け、州政府行政組織内で相応の地位に至った人物の履歴と、サラワク州の生活水準と生産構造についての意見を聞き取った。これをもとに上記集落を数年ぶりに再訪し、この集落出身のサラワク諸都市在住者の広がりについて、詳しい資料を得た。またチャイ博士からは、華人系住民とイバン人との交流について、氏の調査に基づく知見を受けた。また博士を通じて、マレーシア・サラワク大学に学ぶイバン人学生および華人系学生とのインタビューも行ない、両民族集団間の相手に対するイメージの変遷に関して、意味ある知見を得た。 現地調査のほかに、小集団人口学等のアプローチにもとづいて、イバンの近年の移住状況の意義を理論的に再考する試みを開始した。こうした理論の洗練と具体的な家族史資料との照応はいまだ緒についていないが、モダニティ論のなかに人口学的知見を組入れることの意義については確信が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査による資料収集は順調に進捗している。ただし各年次の現地調査の日数が限られているため、計画以上の成果を収めるには至っていない。自省している点のひとつは、男性からの聞き取り調査に比して、女性からの聞き取りが大きく不足している観あが否めないことである。イバン社会一般に関する文献資料は十分に収集しているが、これを深く分析するまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度においては、上記調査現況の限界を破るべく、イバン人の女性教育職従事者からの聞き取り調査を計画している。また時間的制約については、可能であれば2度以上の調査を行ないたいと考えているが、他の業務との関連で実行に難があるかもしれない。28年度は研究計画上の最終年度に当るが、他業務・他研究との兼合いで、所期の研究目的を達し得ないと判断した場合には、基金の来年度への繰り延べによって研究を1年延長することを考慮する必要が生じるかもしれない。
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Causes of Carryover |
本務校における教育教材作成業務が予想を超えて大きかったため、現地調査に当てることのできる日数に不足が生じた。このため基本的に海外出張滞在費相当分(ほぼ2週間分)が余剰となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
可能な限り現地調査に当てる日数をとるつもりであり、全体の金額はこれに大きく使用される予定である。
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