2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370956
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
吉田 竹也 南山大学, 人文学部, 教授 (10308926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 楽園観光 / 合理化 / バリ / 沖縄 / マックス・ヴェーバー / クリフォード・ギアツ |
Research Abstract |
本研究は、マックス・ヴェーバーの合理化論をひとつの起点とし、現代の楽園観光地のひとつである、インドネシアのバリ島における宗教と観光の関係を、検討しようとするものである。 平成25年度は、まず、この楽園観光地の構造的特徴を整理するという作業の総括をおこなった。これは、『反楽園観光論』という著作(単著)にまとめた。 そして、その後、ヴェーバーの合理化論およびその理論・方法の背景をあらためて整理すること、そして、このヴェーバーの議論を援用しつつバリ宗教の合理化論について論じた、ギアツのバリ宗教論を再検討することという2点を、最優先の課題として取り組んだ。両者の合理化論を突き合わせ整理した結果、まだ暫定的ではあるものの、今年度における研究成果として、今後の議論の方向性をある程度固めることができた。 具体的にいえば、ヴェーバーの宗教合理化論の整理と現代社会理論の諸研究との接点を探るという観点から、合理化論をリスク社会論と接続することが、本研究にとって有望な議論方向性となるであろうという見通しを得た。今後は、この方向をさらに推進させ、理論的な検討を重ねていく予定である。 また、民族誌的事実の整理・検討についても、バリおよび国内の楽園観光地である沖縄において短期の調査・資料収集作業をおこなった。これについては、これまでのデータとの突き合わせと、今後のさらなるデータ収集を待って、あらためて総括をしていく必要がある。さしあたり、平成25年度については、今日のバリ宗教の実態の一端を把握することができたが、沖縄に関する議論の見通しを得るという作業は、平成26年度以降の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、研究の基盤を築く年度と位置づけた。楽園観光論に関する研究成果を公刊し、また理論研究の面でも、予定の議論をほぼまとめ、さらにリスク社会論との接続可能性という今後の見通しを得たので、以上の点では、ほぼ順調あるいはそれ以上に進展していると評価する。 ただし、リスクの自己作動的(オートポイエティック)発生という仮説を展開することはできなかった。また、バリおよび沖縄での民族誌的データの収集作業(とくに後者)は十分進めることができなかった。これら新規のデータの収集作業は進捗が遅れていると評価する。ただし、これまでのデータを整理するという作業は進めた。以上の点で、民族誌データに関してはやや遅れていると評価する。 トータルでは、やや遅れ気味だが、ほぼ順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本格的な研究の展開の年と位置づける。合理化論とリスク社会論との接続可能性という、今年度の研究成果として得られたひとつの見通しを、さらに具体的な議論として展開する。また、データの収集も進める。ただ、本務校での役職の仕事が多忙であるため、現地での調査・資料収集の日数をさらに増やしたくとも、それは難しい。したがって、新規のデータの収集よりも、デスクワークによる既存のデータ整理に重点を置くことを考えたい。 平成26年度には、本申請研究に関する学術的な成果の公表を行う予定である。
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Research Products
(1 results)