2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370956
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
吉田 竹也 南山大学, 人文学部, 教授 (10308926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 楽園観光 / 合理化 / リスク社会 / バリ島 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①現代社会論や観光論の成果を踏まえつつ、ヴェーバーの合理化論を再検討し、観光と宗教の関係という論点に関わる理論的枠組みを整理する議論、②バリの宗教および観光に関する既存の民族誌的記述の整理と、あらたなデータの収集にもとづく民族誌的トピックの追加による、事実関係の記述的理解、③このバリに関する宗教と観光の関係の把握という一義的な主題を補うための、沖縄周辺地域を第二のフィールドとした比較検討、の3つから成り立つ。 平成26年度には、理論研究の面で、ギアツのバリ宗教合理化論とヴェーバーの宗教合理化論との差異と共通性を整理した。この作業には一定のめどが立ったので、その内容を平成27年5月の文化人類学会で発表する予定であり(査読付き学会発表)、現在その内容の詰めの作業を行っている。また、リスク論と観光論・宗教論との接合可能性について考察する作業も進めた。こちらはまだ収束していない。ただ、そのひとつの成果として、『リスクの人類学』という研究書の書評を『年報人類学研究』に投稿した。 このデスクワークと並行して、観光と宗教の実態について、2週間ほどバリで、また1週間ほど沖縄で、それぞれ資料収集を行った。バリでは、新規の研究トピックを探求するにはいたらず、これまでの継続のデータ収集を行った。沖縄では、観光と宗教の関係を慰霊観光という形態において捉える可能性を探った。現地での参与観察はまだ十分なものではないが、この主題を文献研究と組み合わせて議論を構築する可能性を、現在探求している。そして、先行研究のデータをも踏まえ、1920年代から現在にいたる100年間のバリおよび沖縄の観光と宗教の関係のあゆみを整理するという議論構想を練っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点では、平成26年度を本格的な研究の展開の年と位置づけていた。理論研究の面では、バリ宗教合理化論の整理に一定のめどがついた。合理化論とリスク社会論とを架橋し観光研究につなげるという作業にはまだめどが立っていないが、作業は進めており、おおむね予定の範囲内と考える。 バリ島の資料収集と整理については、過去100年間の観光と宗教の関係をたどりなおすという構想をもつにいたった。沖縄については、慰霊観光から楽園観光へ、という議論の構想を立て、これについて資料の整理と議論構築に入っている。バリについては、新規のトピックの発見が課題であるが、こちらもおおむね予定の進度と判断する。 この年度には、本申請研究に関する学術的な成果の公表を行う予定であった。学会発表というかたちでそれも達成したので、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究の面では、合理化論とリスク社会論とを架橋し観光研究につなげるという比較的おおきな作業が残っている。 バリについては、過去100年間の観光と宗教の関係をたどりなおすという構想をもつにいたったので、文献研究を中心にこの作業を進めながら、新規のトピックを付加することができないか、その可能性を探っていく。 沖縄については、慰霊観光から楽園観光へという流れを議論として明確化する作業を進める。そのうえで、合理化やリスク社会化といった論点との接合をはかる。申請時点での計画では、バリと沖縄を結びつけ体系的な議論を構築する計画だったので、沖縄とバリに関する議論との整合性をはかることも、今後の作業として残っている。
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Research Products
(3 results)