2015 Fiscal Year Research-status Report
インドネシア・オランダ裁判制度改革の比較:法の移植と経路依存的発展の実証的分析
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25380005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80410851)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インドネシア / アジア法 / 司法行政 / 比較法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究事業の目的は、インドネシア司法制度の問題を考察するために、その形成および発展過程に大きな影響を与えたオランダ植民地期の司法制度の特徴と、またその後のインドネシア司法制度の発展過程を明らかにすることである。本年度は、主に二つのテーマについて研究を行った。第一に、オランダ植民地期における原住民法曹の養成および司法制度内での位置づけについてである。そして、第二に、現在のインドネシア裁判所における、裁判所行政についてである。 第一のテーマについては、オランダ植民地期の裁判官異動資料、原住民裁判官養成機関(バタヴィア法律学校)の資料を元に、原住民裁判官の植民地司法機構におけるキャリアと、オランダ人裁判官のキャリアと比較した。1900年以降、原住民裁判官の数は増えていくが、その配属先は小規模な地方裁判所であり、そのため複雑な法律問題について経験を積む機会を持たなかったこと、その背景には原住民裁判官は地方での人材不足に充てられたことがある。このことは、現在のインドネシアの裁判官採用にも見られ、裁判官の実地での経験蓄積に影響を与えている。この研究成果については、Asian Law Institute年次研究総会(台湾)で報告した。 第二のテーマについては、インドネシア・西ヌサトゥンガラ州にある4つ地方裁判所(ロンボク島およびスンバワ島)について、非法曹裁判所職員(書記官など)の業務および採用・昇進、裁判官との関係についての調査を行った。2016年9月のアジア法社会学会(シンガポール)で報告するため研究成果をとりまとめている。 またインドネシアの議会と司法に関する研究報告を欧州東南アジア学会(ウィーン)で行った。また、インドネシアにおける西洋近代法理論継受を日本と比較した報告を、スイス・フリブール大学で開催された国際会議で行った。この成果は論文集として出版する作業を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、第一にオランダ植民地期における原住民法曹の養成および司法制度内での位置づけについて、そして、第二に、現在のインドネシア裁判所における、裁判所行政についての研究を行った。 第一のテーマについては、この研究成果については、Asian Law Institute年次研究総会(台湾)で報告し、さらに2016年度に名古屋大学法政論集に論文として掲載するために準備している。資料は、オランダ植民地期の裁判官異動資料、原住民裁判官養成機関(バタヴィア法律学校)をオランダ・ライデン大学および公文書館、インドネシア国立図書館などで収集した。そして、原住民裁判官の植民地司法機構におけるキャリアと、オランダ人裁判官のキャリアと比較した。 第二のテーマについては、インドネシア・西ヌサトゥンガラ州にある4つ地方裁判所(ロンボク島およびスンバワ島)について、非法曹裁判所職員(書記官など)の業務および採用・昇進、裁判官との関係についての調査を行い、2016年9月のアジア法社会学会(シンガポール)で報告するため研究成果をとりまとめている。同学会での報告はすでに受理されている。 またインドネシアの議会と司法に関する研究報告を欧州東南アジア学会(ウィーン)で行った。また、インドネシアにおける西洋近代法理論継受を日本と比較した報告を、スイス・フリブール大学で開催された国際会議で行った。この成果は論文集として出版する作業を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は本研究計画の最終年度となるため、これまでの研究成果を積極的に論文/学会報告として公開し、また当該研究を発展させていく方向性について検討していく。現在、「法整備支援双書」と題するシリーズの出版企画が進み、そこではインドネシア法に関して独立した巻を設け、本研究責任者が編集を行う。同書はインドネシアの法と社会について、法学、政治学、社会学、さらに法律実務の側面から複数の専門家が寄稿するものであり、またインドネシア司法制度および裁判行政、インドネシア法の歴史については研究責任者が執筆する。本書は、当該研究事業成果の社会還元となることを目指している。 具体的な研究内容としては、インドネシア司法組織における裁判官・司法職員、ならびに非司法職員(書記官など)の異動・人事管理、職務関係についてのこれまでの調査を整理・公表することに加えて、司法隣接職(特に、公証人、弁護)の規制、役割についても実地調査を行い、インドネシアにおける法律と社会のインターフェースを明らかにしていくことを目指す。
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Causes of Carryover |
2015年度末に予定していたインドネシアにおける調査および研究打ち合わせ(司法隣接職に関する調査)が相手側スケジュールと調整がつかず行えなかったため。この調査は2016年5月15日~20日に実施する予定となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように、2015年度中に行う予定であった調査を2016年度5月に実施することとする。
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