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2013 Fiscal Year Research-status Report

シャリーアと国家―イスラーム法学の近代

Research Project

Project/Area Number 25380011
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionJ. F. Oberlin University

Principal Investigator

堀井 聡江  桜美林大学, 人文学系, 准教授 (20376833)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywordsシャリーア / カーヌーン / 法の近代化 / 学説の標準化 / オスマン朝 / 出訴期間 / ハナフィー派 / エジプト
Research Abstract

シャリーア(イスラーム法)が制定法の影響の下,近代的な変容を遂げたとする仮説を論証する1つの材料として,時効制度をとりあげて学会報告を行った。従来の研究においては,制定法によるシャリーアそのものの改変については議論されていないが,本発表のテーマはまさにそうした例にあたる。スンナ派のシャリーアにおいては,マーリク派による取得時効を例外として,時効制度は存在しなかったが,近現代法においては,「シャリーアに基づく」とされる15年の消滅時効の立法例が散見される。しかし,この15年とは元来,消滅時効ではなく出訴期間を意味し,かつこの制度は,16世紀の制定法に基づき,ハナフィー派シャリーアに導入された。それ以前の同派においては,30年から36年といったより長期の出訴期間を唱える説が散見されたが,これらは恐らくは15年の出訴期間導入を正当化する目的で,16世紀以降さかんに援用されるようになった。興味深いのは,問題の制定法が直ちに「法」となったわけではなく,通常の学説が権威を確立するのと同じプロセスをたどっていることである。
今後の課題は,ハナフィー派以外の学派が少なくとも「シャリーア」としてはこの制定法を導入しなかったとすれば,その理由を明らかにすることである。また,オスマン朝本土やエジプト,シリアおよびそれ以外における法の効力や適用に関する地域差についても考える必要がある。
また,法務大臣としてエジプトの法の近代化と深く関わったムハンマド・カドリーによるハナフィー派法学に基づく非公式の債権契約法典(『ムルシド・アル=ハイラーン』)について,日本語では恐らく最初の専論を著した。同書は,西洋化という意味での法の近代化以前のイスラーム法学およびシャリーアの変容という意味で,オスマン民法典(メジェッレ)と共に重要な考察材料であり,その類似点と共に重要な相違点をも示した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

研究計画に掲げた25年度の2つの目的(①16世紀以降のハナフィー派法学に関する重要な資料の収集,②シャリーアの時効制度に関する学会報告)を達成し,時効制度以外の制定法の影響事例について考察を進めている段階にある。

Strategy for Future Research Activity

26年度の研究計画に従って進める。すなわち,第1に,オスマン朝の制定法の調査・分析を進め,イスラーム法裁判官(カーディー)のシャリーア適用に対する規制(特に適用可能な学説の通説への限定)や,シャリーアの改廃に相当する法規の例を集めて精査し,なかで特に永続的な法として機能した規定を明らかにする。主要な資料はほぼ国内で収集可能である。
第2に,前年度に収集した資料を活用し,イスラーム法学における新たな伝統としての学説標準化のプロセスに着目する。研究計画書に記したように,この作業は16世紀以降のオスマン朝のハナフィー派法学,なかでもイブン・ヌジャイムとその学統の法学書を中心とするが,これまでの調査から,このプロセスにおいてはファトワー(法学意見)集が大きな役割を果たしたことが推測される。ファトワー集といえば,従来,時代・社会に応じたシャリーアの法的発展を反映する実証的な資料として多用されてきたが,本研究の文脈では,シャリーアのワンパターン化を法実務レベルで反映させる上で極めて重要な役割を果たしたと考えられる。本研究にとって重要と考えられるファトワー集のいくつかはいまだ未入手であるため,これらを中心とする補足的な資料収集をスレイマニエ文書館にて行う。
第3に,前年度の成果とあわせた中間報告的な成果の発信を行う。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

最大の原因は,トルコのスレイマニエ文書館で集めた写本のコピー代を高く見積もっていたことである。実際,トルコに限らず,かつて中東における写本のコピーは,可能であるとすれば高額であった。
文献資料の購入費または旅費の一部とする。

  • Research Products

    (2 results)

All 2014 2013

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] ムハンマド・カドリー『ムルシド・アル=ハイラーン』―イスラーム法学の近代2014

    • Author(s)
      堀井聡江
    • Journal Title

      柳橋博之編『イスラーム 知の遺産』東京大学出版会

      Volume: 0 Pages: 191, 219

  • [Presentation] シャリーアの時効制度におけるカーヌーンの影響2013

    • Author(s)
      堀井聡江
    • Organizer
      日本オリエント学会第55回大会
    • Place of Presentation
      京都外国語大学
    • Year and Date
      20131027-20131027

URL: 

Published: 2015-05-28  

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