2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380011
|
Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
堀井 聡江 桜美林大学, 人文学系, 准教授 (20376833)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | シャリーア / カーヌーン / イスラーム法学 / イブン・ヌジャイム / オスマン朝 / ハナフィー派 / ファトワー / 学説統一 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究実施計画は,①オスマン朝の制定法(カーヌーン)集の調査,②イスラーム法学における学説の標準化とそれに伴う新たな法的伝統の形成という問題の考察,③前年度分を含む成果の発表であった。①については,前年度に考察した制定法による時効制度(正確には出訴期間)の導入を除くと,法学書に言及される,制定法の影響による,またはその可能性が疑われるシャリーアの改変の例は,制定法集では十分な裏付けがとれなかった。ただし,この点については研究代表者のオスマン語能力の不足ゆえに資料の解析に時間を要することが大きな要因であるため,引き続き調査を続けたい。 ②については,前年度に引き続きスレイマニエ文書館(イスタンブール)での資料収集を行い,これらを分析した結果,学説の標準化に関連して2つの問題の重要性が明らかになった。 A.10~11世紀以降,学説相伝の主流はファトワー(法学意見)集が占める傾向が顕著である。従来のイスラーム法研究では,ファトワーはイスラーム法の多様な発展を支えたと評価されているが,私見ではファトワー集で言及される学説をもって有力説を定義し,他の学説の適用を排除することにより,むしろ学説の標準化に貢献したと考えられる。 B.諸学派の学説の「接合」を意味するタルフィークは,従来の研究においては近代イスラーム立法における革新として知られるが,その起源は前近代のイスラーム法学にあり,16-17世紀には大きな議論となっている。もっとも,その力点は必ずしも近代におけると同様にシャリーア統一にあるとは言い切れないが,その点を含めて引き続き調査する。 ③学術専門書ではないが,『イスラーム法の「変容」 近代との邂逅』(山川出版社,2015.大河原知樹氏との共著)では,シャリーアと制定法の関係の歴史的考察において,本研究の成果を反映させることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
来年度に持越しの調査もあるが,研究計画全体としてはほぼ目標を達成し,成果発表も実施できているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
オスマン朝期の制定法の調査を続けると共に,前近代におけるシャリーアの標準化と関連し得る上記タルフィークのイスラーム法学上の位置づけを明らかにする。タルフィークはハナフィー派の内外で是非が争われ,また関連する論点には,適用学説の範囲(各学派の裁判官は,自派の有力説のみの適用を義務づけられるか否か)が含まれるため,タルフィークの問題を通じて前近代におけるシャリーアの標準化ないし統一の問題をかなりの程度明らかにでき,またハナフィー派と他学派の比較という最終年度の目標もある程度達成できると考える。 成果発表は,イスラーム法学におけるタルフィークに関して5月に学会報告を予定しているほか,年度内にこの問題または前年度の成果に関わる論点についての論文作成を目指す。
|
Causes of Carryover |
海外の書店から購入し,年度内に納品される予定の本の一部につき,書店の在庫切れにより注文がキャンセルになったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に購入する予定の本の代金に充てる。
|
Research Products
(3 results)