2014 Fiscal Year Research-status Report
近代イングランドにおける刑事裁判の専門化と法律専門家の役割
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25380015
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小室 輝久 明治大学, 法学部, 准教授 (00261537)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イングランド / 刑事裁判 / 治安判事 / 書記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,19世紀イングランドの刑事裁判における治安判事(非法律専門家)と書記官(法律専門家)との関係を明らかにするために,平成25年度に引き続き,ロンドン首都地域の行政・裁判史料を所蔵するロンドン首都公文書館London Metropolitan Archives(LMA)において,治安判事裁判所書記官に関する資料の調査,収集及び読解を行いました。 収集及び読解を行った主な資料に,(a) Middlesex Sessions of the Peace Court in Session ,(b) Sessions of the Peace Book containing details of cases dealt with and adjournedがあります。(a)は1850年,1860年及び1870年の,イングランド・ミドルセクス州の治安判事四季会議の記録集であり,四季会議の開催スケジュール一覧表,County Day(四季会議のうち行政関係の業務日)の記録,下級審における判決に対する上訴状,これに対する裁判所の決定書などを含んでいます。(b)は,1880年前後のミドルセクス州の治安判事四季会議の記録集であり,各々の上訴事件に関する裁判所の決定などを含んでいます。 上記の資料の特徴および意義は,次の3点です。(a)Court Dayの記録中に,当該州の治安判事の姓名の一覧表と治安書記の姓名の記載があり,これらを確認できること,(b)1860年代以降の裁判所の決定書は,概ね定型的に印刷されたひな形が用いられており,それぞれの時期における典型的な事件例を確認できること,(c)裁判記録の多くそのものには,治安判事名の記載がないこと(By the Courtとのみ記載される),(d)裁判記録における治安書記の署名が,無署名であったりゴム印が使用されたりことがあり,かつ同一の治安書記名の記録のなかに筆跡が異なるものがあることから,記録書の作成が治安書記の下僚によって行われていた可能性があることです。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、1850年代から1890年代までのイングランドにおける治安判事の裁判所の記録の収集及び読解を行い,紛争解決方法の概要を明らかにすることができていますが,当初予定していた,(a)1820年代から1840年代までの関係史料の収集と,(b)裁判官・書記官の人名調査が,当初の計画よりもやや遅れています。
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Strategy for Future Research Activity |
1850年代以前の関係資料の調査を実施するとともに,(a)裁判官・書記官の人名調査と,(b)裁判関係資料の翻刻を行い,研究成果のとりまとめを行います。
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Causes of Carryover |
年度内の2回の外国資料調査を確実に実施するため、1回目の調査時に経費の一部を請求しなかったため。また,購入を予定していた資料を,関係者から貸与していただくことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予算より嵩むことが見込まれる外国旅費(資料調査費用)に充当する予定です。
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