2014 Fiscal Year Research-status Report
占領管理体制下における「戦後法学」の形成過程に関する法史学的観点からの再検討
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25380017
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
出口 雄一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (10387095)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 基礎法学 / 法制史 / 法学史 / 戦後史 / 国際情報交換(アメリカ・ドイツ) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、「戦後法学」の形成過程の検討についての枠組をより精緻化するために、1)平成25年度に引き続き、戦時下から戦後初期を中心とする法律家・法学者の学問形成の実証を行い、併せて、2)「戦後法学」の具体的な特色を他領域の戦後史との比較の中で位置づけることを試み、国立国会図書館や各大学図書館などにおいて収集した史資料、同時代の書籍・論文などを踏まえて検討を行った。 具体的には、1)に関しては、法制史学会総会におけるミニシンポジウム「戦時・戦後における「経済法」――比較法的観点から」のコーディネイト(6月1日)、「再帰する法文化」をテーマとする法文化学会第17回研究大会においては「日本法理研究会」において展開された思考様式についての検討を行い(11月22日)、また、後者のテーマと関連する論文を『法史学研究会会報』に寄稿した(印刷中)。一方、2)に関しては、代表を務めている占領・戦後史研究会において、年間テーマを「戦後システムの転形」と設定し、プレシンポジウムにおける報告(11月8日)、及び、年末シンポジウムにおいて司会を担当した(12月13日)。同企画は『年報日本現代史』において公表予定である。 以上の他、9月7日から15日にかけて、アメリカ国立公文書館を訪問して資料調査を行い、占領管理体制の下での法と法学のあり方を示すものを中心とする史料をデジタルカメラを用いて撮影・収集した。また、昨年度に引き続き、8月24日~26日、及び、3月2日~4日にかけて、長野県伊那市富県公民館が所蔵する旧富県村文書の調査を行って仮目録を作成し、戦後の法がどのように地方に伝達され、戦後改革(農地改革・山林整理など)の実施過程について検討する素材を得、更に、戦後の地方法務局の実態を紹介する論稿も執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体計画のうち、検討の枠組みの構築については、今年度に行ったいくつかの研究報告、及び、コーディネートの過程において、戦時下の法学のあり方を前提とした戦後の法学の特質、とりわけ、戦時・戦後の行政立法を「解説」し、戦後の法典を「注釈」する既存の法学に対して、啓蒙的な側面を強くもつ「戦後法学」との対抗関係が生じる構造についての仮説を構築することが出来た。また、アメリカ国立公文書館に所蔵されている史料については、占領管理に関する史料の所蔵状況、国内の諸機関の法学者の旧蔵史料についても、ある程度把握することが出来た。 その過程で析出された課題は、占領管理体制下のみならず、1950年代以降の社会状況に対応した法学の変容について、史料の所在を含めて、検討を行う必要性であった。また、アメリカ国立公文書館においては、「戦後法学」の制度的枠組みとなる教育機関や、法学者・法律家の戦後初期の活動に直接関連する史料を見出すことが出来ていない。これらの点については、今後の研究の遂行の過程で調査を行い、史資料の収集に務めることとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、「戦後法学」の前提となる戦時下の法学の動向についての総括的な検討、及び、「戦後法学」のさまざまな局面における形成過程を検討することとしたい。具体的には、1)6月に予定されている法制史学会東京部会・戦時法研究会共催のミニシンポジウム「戦時体制下の公法学史――ドイツ公法史との対話の試み」において英語にてコメントを行うこと、2)勁草書房のシリーズ企画「日本近代法史の探求」第2巻「経済法の歴史」への寄稿を行うこと、3)平成26年度に行った法文化学会報告を元として、法文化叢書『再帰する法文化』への寄稿を行うこと、4)マックス・プランク研究所刊行の雑誌『Rechtsgeschichte』に、戦時・戦後の社会法についての英文原稿の寄稿を行うこと、及び、5)戦時法研究会におけるこれまでの活動をまとめた書籍『戦時体制と法学者』を共編にて刊行することを予定している。 これらの共同研究と並行して、アメリカ公文書館における資料調査、及び、国内の各機関における史資料の収集についても継続して行う予定である。平成25年度・26年度の成果を踏まえて、収集した史料を整理し、共同研究等によって検討を深め、「戦後法学」の形成過程についての新たな知見について、その構造の実証分析を行いたい。
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Research Products
(8 results)