2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 淳子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00372285)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公法学 / 住民 / 住民自治 / 原告適格 |
Research Abstract |
平成25年度は、日本の法制度および判例について、住民自治論の観点と原告適格論の観点の関係付けに留意しながら分析することを主たる目的とし、これと並行して、歴史および隣接諸科学について、諸学との相互交流に関する方法論を学ぶよう努めた。 まず、住民自治論の観点と原告適格論の観点から、基底にある法理念・法原理を意識しながら、法制度および判例を総合的に分析するという見地に立って、具体的な判決を素材とした検討を行った。とりわけ、墓地経営許可の取消訴訟に関する付近住民の原告適格の問題は、行政事件訴訟法改正のインパクトによる判例変更が強く期待されているのみならず、法の規定が何らの要件も定めず委任すら行っていないなかで、多くの地方公共団体が条例によって実体的・手続的基準を精緻化していることをめぐって、「法律規定条例」とも呼ばれる条例の適法性の問題が地方自治法理論上のアクチュアルな論点となっている。一般行政法理論と地方自治法理論が交錯するこの事例研究は、本研究の具体化という意味においても有益であったと思われる。この研究の過程において、地域住民の原告適格の拡大に向けた判例の歩みを、画期となった諸判決の意味を問い直しながら確認する作業をも行った。 また、歴史・隣接諸科学研究に関しては、政治学・行政学・歴史学において分厚い研究が蓄積されている明治地方自治制度の成立・発展過程を学ぶことに意を注いだ。(名望家を社会的媒介として結びつけられた)頂点の官僚制機構と底辺の村落共同体という両極が国民統合の基礎構造を成していたという、いわゆる丸山学派によって示された見解と、これに対するポレミックとして精力的に展開されている近時の諸研究を読み進めることを通じて、「土地」や「共同体」といった基本的観念をある程度把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、いわば二本柱として、住民自治論の観点と原告適格論の観点から、法制度と判例を総合的に分析すること、および、歴史と隣接諸科学について、学問上の方法論を学んだ上で、基本的な観念の法的明確化を行うことを目的としていたところ、いずれについても、ある程度まで研究を進めることができたが、すべてをカバーするには至らなかった。 まず、法制度および判例の総合的分析に関しては、具体的な判決を素材としてこの目的に迫ることを試みたため、特定の個別行政分野を対象とした研究にとどまった。本研究が過度に抽象性を帯びるのを防ぐためにも、この研究手法は有用であると考えているが、一定の切り口から抽出した諸行政分野を体系的に取り上げることを目指していく。 また、歴史と隣接諸科学の研究に関しては、学問上の方法論の修得が課題であり続けているが、これは、本研究に示唆を与える諸文献を読み進めることを通じて身につけていくことになろうとも考えている。明治地方自治制度の成立・発展過程をより広くより深く探究していくのに加え、隣接の学問分野における相異なるアプローチからの研究に学ぶことを通じて、「住民」概念の豊かな含意を明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、基礎理論研究を継続するとともに、フランス法について、実証研究をも踏まえながら、近時の法制度の展開を分析することに重点を置く。 基礎理論研究に関しては、本研究にとって最も適切な切り口を設定した上で、この切り口に則って抽出した行政分野について、法制度および判例の総合的研究を進めていく。都市計画・まちづくりや環境の分野のみならず、東日本大震災からの復興に関しても、既に生じている問題や生じるであろう問題を鋭敏に把握しつつ、本研究ならではの学問的成果を生み出せるよう努力する。 また、フランス法に関しては、住民のアイデンティティの中核を形成しているコミューンをめぐる近時の改革の動向を、歴史的・社会的文脈のなかに位置づけ意味づけることに加え、コンセイユ・デタの判例法理を通じた原告適格の積極的な拡大と、立法による地域民主主義制度の慎重な形成との“落差”を、制度的側面と実態的側面の双方から解明することを試みる。 この解明には、実証研究が有益であると考えられることから、フランスに赴き、研究者および実務家へのインタビュー・ヒアリングを行って、意見交換・議論をする。フランスでは、パリのほか、在外研究従事地であったエクス・アン・プロヴァンスを訪れる予定である。エクス・マルセイユ大学が毎年開催しているヨーロッパ諸国を中心とする国際研究会は、各国が共有する最先端の問題状況を肌で学び取ることのできる貴重な場であることから、これに出席する予定である。
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Research Products
(2 results)