2016 Fiscal Year Annual Research Report
Defining inhabitants--local democracy and standing
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25380023
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 淳子 東北大学, 法学研究科, 教授 (00372285)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 住民 / 住民自治 / 原告適格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、住民概念をめぐる従来の議論の曖昧さに対する問題意識を出発点として、政治的統合の原理と生存・生活・社会の原理という二つの原理の対抗と連携を基本的な視座としながら、住民自治論および原告適格論に関わる法制度・判例を総合的に分析しようとしたものである。 平成28年度においては、まず、政治・社会情勢の悪化に鑑みて実施を延期していたフランスでの現地調査を行った。フランス法は、コンセイユ・デタの判例法理を通じて、コミューンの住民に取消訴訟の原告適格を認めることを早くから確立していたが、1990年代に入ってから、地域レベルの民主主義が立法によって創設され、さらに近時は、コミューン連合体に関する改革(直接選挙制の導入やメトロポールの強制設立など)が急速に進展している。現地調査をも踏まえて、これらの動向が「住民」の法的地位のありように対しても変化をもたらす可能性があることを指摘した。 また、政治学・行政学・法社会学などの学際的なアプローチによって、近時の日本において政策の担い手となることが強く期待されている住民集団のあり方について考察を加えた。とりわけ、都市内分権に関わる法制度の分析や地域運営組織に関わる実践の観察、さらには、住民訴訟に関わる法制度設計の議論を通して、公権力(立法・行政・司法)―住民集団―住民個人の間の緊張関係と協力関係を踏まえつつ、住民自治論の新たな地平を切り拓こうと試みた。 研究期間全体を通じて、わが国の法制度や判例を検討するにとどまらず、歴史、隣接諸科学および比較法を補助線ないし対照軸としつつ、住民自治論と原告適格論の双方を見据えて「住民」論を再構築するという本研究の目的を一定程度達成することができた。
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Research Products
(4 results)